いつもの自分を必死に探って、平常心を装って言葉を選ぶ。
__ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、
何こんなにドキドキしてんだ俺!女子かよ!
いや、本当はそうじゃねえんだよ。
…お前からの電話だったからこうなってるんだよ。
いっそ言ってしまいたい。
___〝お前のことが好きだ〟って。
それを言ってしまえたなら、どれだけ楽になるだろう。
お前はどんな顔をするかな。
拒絶されちゃうかな。意外と赤くなったりするのか?…もしかしたら、ころんも俺の事…とか。
気持ち悪いな、俺。
妄想癖か?俺は性癖だけじゃなく、妄想癖までこじらせてたのか?
気づけば声に出していて、ふと我に返った。
___そういうところも好きだ。
馬鹿みたいに素直で、真っ直ぐなところ。
少しの沈黙が続いた後、二人して笑っていた。
こうしているだけで十分幸せなのに、最近は、それ以上を求めてしまう自分がいる。
こいつの全てが欲しいなんて。俺のことを想ってほしいなんて。
俺達は男同士で、そして同じグループで活動している。ありがたいことに、人気も出てきている。
最高に嬉しいはずなのに、最低で最悪だ。
だって、俺があいつを想い続けて、もしもこの先付き合うことになったとしたら?
___もし…それがバレたら?
俺だけじゃない、ころんまで傷つけることになる。それだけは絶対に、絶対に嫌なんだ。
何があろうと、あいつには笑っててほしいんだ。
だからこの気持ちにはそっと蓋をしようと決めた。俺の想い人のために。
せめて、ずっと同じ場所に立っていたいから。
これからも、隣で笑い合っていたいから。
〝ドッヂボールのやつ〟とは、そのままのゲーム内容で、ころんが唯一俺に勝てるゲームだ。
そのあと俺達は、夢中になってゲームに没頭した。
結局スマブラもやることになって、気持ちいいほどに全勝した。
ハンデをやるも結果はいつも同じで。
「つまんないこのゲーム!」とか言いながらも、何回でも再決戦を求めてくる。
電話越しに聞こえる悔しそうな声に、ふいにかわいいと思ってしまった。
…お前、そんなこと言ってたらまじで襲うぞ?
って言いたいところだったけど、「はいはい」とだけ言って電話を切った。
レコーディング、もう明日か。
ころんに会えるの楽しみだな…じゃなくて!ちゃんと良いもの作れるように頑張らないと。
そんなことを考えながら寝る支度を済ませた俺は、ころんとの電話での出来事を思い返しながら眠りについた。
__その夜は、なんだか幸せな夢を見た気がした。
✱✱✱
~レコーディング当日~
見事フラグ回収を果たしたころんくんでした。
✱✱✱
~レコーディング終了後~
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。