学園の大聖堂。
入学式の会場となっているここには、王侯貴族、 高名な学者や在校生など、数え切れないほどの人で埋め尽くされていた。
そして始まる入学式。
長ったらしい教師の話は右から左へ流していた。
だって聞く意味無くない?
やがて、新入生代表の挨拶へと順番は回っていった。
壇上に上がった優秀そうな男子。
貼り付けたような笑顔で模範解答みたいな挨拶を述べていった。
全てにおいて完璧.........と言えるけれども、あの男子は少し不気味だな。
入学式は、何も無いまま終わっていった。
その後、別室に案内されて、魔力測定の説明を受ける。
恐らく、私が魔力を操作することによって、完全に魔力量を誤魔化せる。
私の番は、だいたい100番目くらい。
そのくらいなら、前の人物が全員偏った魔力量、なんてことは無い。
よし、いける。
魔力を測る水晶に手を当てて、調節した魔力をゆっくりと込める。
平均よりも少し高くしよう。
前の人たちの平均は、確か.........
うん、10分の1を目安にしたからね。
10分の1の魔力で優秀と言われるのなら、最大の魔力だと化け物か。
本当に、魔力を調節しておいてよかったと思う。
あれは、確か、不気味な学年代表。
魔力まで高かったら、本当に怖いと思う。
教師が放った数字に、当たりがざわつく。
一方私はと言うと、カリースとやらをガン見していた。
は? は?は?は?は?は?
いやいや、おかしい。
こういっぺんに魔力5万以上のやつが現れるものなの?
そいつがにこやかにはなった言葉に少しゾッとした。
新入生代表と魔力量は関係ない。
貼り付けられたような微笑みと、完璧な力。
どうしても、あいつが何かしたのでは無いか、という考えが頭から離れない。
少し寒気がして、もうあいつから目を逸らし、早く帰りたいと願う。
今だけは、たとえあの腹黒王子でも早く会いたい、そう思ってしまう。
早く、この寒気をなくしたい。
ただ早く終われ、と願うことの他にできることは無かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!