西内くんは「もう夜も遅いから」と近くの公園まで送ってくれた。
行きも帰りも送ってくれるなんて、本当に王子様みたいだなあ。
照れくさそうに視線を泳がせる西内くん。
やだ、どうしよう。西内くんがかわいすぎる。
いつもクールな西内くんが、そんな夢を持っていたなんて!
……あれ? そんな話をするってことは、彼女をほうきに乗せたのは今回が初めてってこと?
そもそも、いままで彼女はいたのかな。
たしか一年のときは誰ともウワサになっていなかったけど、中学のときにいたかもしれないよね。遠距離恋愛してたって可能性もある。
遠回しに聞いてみたら、気になっていたことまで答えてくれた。
人気者の西内くんに彼女がいなかったなんて驚きだけど、うれしいな。
初めての彼女に選んでもらったんだから、この恋を大切にして、西内くんとたくさんの思い出を作りたいな。
西内くんはシャツの胸ポケットから小さい紙袋を取り出すと、私にくれた。
いつから用意してくれたんだろう、まったく気づかなかった。
ていねいにテープをはがすと、ピンク色の石がついたネックレスが見えた。
お礼を言うと、西内くんははにかんだ笑顔を見せた。とてもキラキラ輝いているその顔が、今日一番の思い出になった。
その日の夜。
寝る前に日記を書こうと思い、日記帳を開いた。
昨日の日記を読み返してみると、どれだけデートが待ち遠しかったかが伝わる。
玲奈ちゃんたちへの報告もだ。
すごく楽しかったし、たくさんときめいたけど……西内くんのヒミツのインパクトが強すぎて、全部吹っ飛んじゃったな。
西内くんが魔法使いだなんて、考えたこともなかったよ。
一緒に空を飛んだ今でも、あれは夢だったんじゃないかと思えてくる。
魔法使いとのお付き合いって、いったいどんな感じなんだろう。
普通の恋愛できないって、具体的にどういうことなんだろう。
それに、西内くんは何でヒミツにしているんだろう?
好きな人と初デートをして幸せいっぱいのはずなのに、いろいろ気になって考えちゃう。
西内くんが魔法使いだって知ったからかな。
私が考えてもわかることじゃないのにね。これから少しずつ西内くんに質問して、魔法使いのことを知っていこう。
前向きになった私は、主に楽しかったことを日記に書いた。
そして、西内くんにお礼のメッセージを送った。
西内くんはすぐに返信をくれた。
何事もなかったかのように、いつもと同じようなメッセージをくれた。
次のデートについて書かれていて、もう約束してるみたいでうれしい。
このネックレスをつけて一緒におでかけする日はいつになるかな。
二回目のデートについて考えるだけで、幸せで胸がいっぱいになった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。