第9話

2.強烈な転校生-5
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2018/08/08 02:38
──次の日。

西内くんに会えるのが楽しみで、ウキウキして学校へと向かった。
昨日は途中まで一緒に電車に乗って帰った。
同じ学校の人達にちらちら見られて少し気まずかったな。
またウワサされてるのかなって思うと落ち着かなくて、西内くんともうまく話せなかった。
でも、私が先に電車を降りるとき、西内くんから「これからも一緒に帰ろうな」と言われて、もやもやした気持ちが吹っ飛んだ。
今日も明日もずーっと一緒に帰れるなんて、うれしすぎる。
席についてアコちゃん先生を待っている間、ニヤニヤが止まらなかった。
予鈴が鳴ると先生がやってきて、朝の挨拶のあとに簡単な事務連絡をきいた。
午前中はずっとホームルームで、まずは学級委員などの委員決めを行うらしい。
今年はどの委員にしようかな。
去年は美化委員でこれといって大きな仕事がなかったから、今年は遠足委員に立候補してみようかな。
なんだか楽しそうだし。
千秋ちゃんと一緒にできたらいいけど、彼女は多分……。
小泉亜子
じゃあまず、学級委員に立候補する人はいませんか?
賀上千秋
賀上千秋
はい!
アコちゃん先生の声かけにすぐ反応したのは、目の前に座っている千秋ちゃんだった。
やっぱそうだよね。
一年の時も学級委員をしていたもの。
しっかり者の彼女は適役だと思う。
小泉亜子
ほかに立候補もいないようなので、賀上さんにお願いしたいと思いますがよろしいですか?
どこからともなく拍手が起こる。
満場一致で女子の学級委員は千秋ちゃんに決まった。
小泉亜子
続いて男子の学級委員ですが、立候補はいませんか?
白鳥蒼真
白鳥蒼真
フッ……ついにこの時が来たか
男子の学級委員に名乗り出たのは、転校生の白鳥くんだった。
立ち上がって教卓の前まで出ると、両腕を胸の前で組んで、アコちゃん先生の横に立った。
白鳥蒼真
白鳥蒼真
俺様は幼少期から帝王学を学んでいる。安心してついてくるがいい
と得意げにつぶやく。
白鳥くんの突飛な行動に教室がどよめいた。
先生もぼう然としている。
小泉亜子
えーっと、つまり学級委員に立候補するってことでいいのかな?
白鳥くんは大きくゆっくりとうなずく。
小泉亜子
でも、白鳥くんは転校生だし、学級委員は難しいと思うのだけど……
私も同じことを思っていた。
転校生っていうのもあるけど、強烈に個性的な彼は、みんなをまとめるタイプではなさそうにみえるけど……。
賀上千秋
賀上千秋
先生、慣れない環境でも堂々としている白鳥くんなら大丈夫だと思います。なんてったって、魔法使いだし! わからないことはあたしが教えます
千秋ちゃんは白鳥くんの立候補を後押ししている。
彼女は人をからかうようなタイプじゃない。
……ってことは、本気で白鳥くんが魔法使いだって信じてるんだ。

〝この世界には、魔法というふしぎな力を使える人間がいる〟

いつか子供のとき、お母さんに教えてもらったことがある。
でも、魔法が使えるかは血筋によって決まっていて、ほとんどの魔法使いはそのことを隠しているらしい。
子供のころはアニメの影響で魔法少女にあこがれていたから、現実を知ったときはショックだったな。
また、魔法使いの人数は年々減っているとも聞いた。
実際、十六年生きてきて今まで出会ったこともないし、都市伝説じゃないかとすら考えていた。
魔法なんてみたこともないし、みんなも同じだと思う。
だから、白鳥くんが魔法使いだと信じているのは千秋ちゃんくらいじゃないかな。
小泉亜子
賀上さんがそういうなら大丈夫でしょう。では、男子の学級委員は白鳥くんにお願いします
アコちゃん先生は困ったように笑いながらも拍手をして応えた。
みんなも先生に合わせて、パチパチと手を叩いた。
白鳥くんは、先生の隣で満足そうに笑っていた。
小泉亜子
──では、賀上さんも前に出てきてください。これからは学級委員のふたりに進めてもらいます
賀上千秋
賀上千秋
はい!
他の委員決めは、千秋ちゃんと白鳥くんが取りしきって行うことになった。
千秋ちゃんがみんなに声をかけて、白鳥くんは黒板に名前を書いていく。
白鳥くんの字はとてもきれいで、まるで国語の先生みたいだと思った。
賀上千秋
賀上千秋
次は遠足委員です。定員は四名で、うち二名は学級委員がやります。立候補はいませんかー?
そっか、遠足委員は千秋ちゃんもなるんだ。
一緒にできたら楽しそうと思って、私は迷わず手をあげた。
ほかにはどんな子が立候補しているのかな?
私より前に座っている人たちは誰も手をあげていない。
後ろも気になるけど、わざわざ振り向くのもどうかと思って確認しなかった。
千秋ちゃんは私と後ろのほうを交互に見て、意味深に笑った。
賀上千秋
賀上千秋
残りの二名は桜井さんと西内くんに決まりました!
えっ……ウソでしょ?
西内くんも遠足委員に手をあげたの?
最初は聞きまちがいかと思った。
でも、白鳥くんがふたりの名前を書いたのを見て、そうじゃないと知る。
ちょっと照れちゃうけど、うれしいな……。
一緒に遠足の準備をしたり、しおりを作ったり、いろんなことができるんだ。
千秋ちゃんと白鳥くんもいて、楽しくなりそうだし。
五月の遠足のことを考えるだけでウキウキした。

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