第15話

3.西内くんのヒミツ-2
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2018/08/29 04:36
──三十分ほど電車にゆられて、私たちは目的地へと到着した。
駅を出て十分ほど歩くと、とてもオシャレな商店街が見えてきた。
桜井心春
桜井心春
わあ、きれい!
ゆるやかな坂がまっすぐに続き、その両端には白い洋風の建物が立ち並ぶ。
一階の入り口にはカラフルな日よけや看板が設置されている。大げさかもしれないけど、まるでヨーロッパの街並みみたいだ。
西内蓮
西内蓮
ここ、家からわりと近くてよく来るんだ。好きな洋服の店もあるし。桜井が好きそうな雑貨屋や、おいしい洋食のレストランもあるよ
桜井心春
桜井心春
そうなんだ。こんなオシャレな場所があるなんて、今日まで知らなかったよ。西内くん、連れてきてくれてありがとう!」
西内蓮
西内蓮
……よかった。こちらこそ、気に入ってくれてうれしいよ
西内くんは照れくさそうにしている。
もしかして、お気に入りの場所を私に紹介したかったのかな……?
そうだとしたら、すごくうれしい。私も、今度西内くんにお気に入りのドーナツ屋さんを紹介したいな。
お互いの好きなものを共有し合って、少しずつお互いのことを知っていく。
そうしていくうちに、共通の好きなものや趣味ができていくのかもしれない。
考えるだけで楽しい気持ちになっちゃう。
西内蓮
西内蓮
……どうした? 考えごと?
桜井心春
桜井心春
ううん、何でもないよ。いろんなお店があってワクワクしてるんだ
西内蓮
西内蓮
そっか
西内くんは優しく微笑むと、私に手を差し出した。
これって……もしかして?
桜井心春
桜井心春
西内くん……?
西内蓮
西内蓮
人が多くて、はぐれちゃうかもしれないから
桜井心春
桜井心春
そ、そうだね……
ドキドキしながら、西内くんの手に自分の手を重ねた。
西内くんの大きな手のひらに優しく包まれた瞬間、胸がいっぱいになった。
西内くんのことが好きって気持ちが大きくふくらんで、息をするのも苦しい感じがする。
手を通じて、このドキドキが伝わったらどうしよう。
意識しちゃって、西内くんとまともに顔を合わせられない。
ごまかすように、いろんなお店の看板を見ながら歩いた。
商店街には洋服、雑貨、本やスイーツなどたくさんのお店があった。
西内くんは本屋さんで小説や参考書などを何冊か買っていた。
私は雑貨屋さんでは可愛いヘアピンを見つけて、ひとつ買うことにした。そのお店はスマホケースが売られていて、西内くんは何種類か手に取って見ていた。
新しいスマホケースがほしいのかな?
いつかおそろいで持てたらかわいいかも、なんて彼の隣で考えていた。

ある程度坂をのぼったところで、テラス席のあるレストランを見つけた。
西内蓮
西内蓮
このお店、よく来るんだ。普通の洋食屋だけど。よかったら食べていかない?
桜井心春
桜井心春
いきたい!
西内くんの言った通り、内装もメニューも街中で見かけるような洋食屋さんだった。
私はナポリタン、西内くんはオムライスを注文した。
料理が運ばれてくると、西内くんは目をキラキラ輝かせていた。
桜井心春
桜井心春
西内くんは本当にオムライスが好きなんだね
西内蓮
西内蓮
うん。……子供っぽいかな
桜井心春
桜井心春
そんなことないけど、ちょっとかわいいなって思っちゃった
西内蓮
西内蓮
……かわいいじゃなくて、かっこいいって言ってもらえるように頑張る
唇をきゅっと結ぶ西内くん。
ちょっとすねているのかな?
そんなところもまたかわいいんだけど、口には出さないでおこう。
西内くんのことは常にかっこいいって思ってるけど、本人に言ったことはないかも。
今言うとフォローっぽくなっちゃうし、照れくさいから、今度伝えてみようと思った。
桜井心春
桜井心春
お腹空いたし、そろそろ食べようか
西内蓮
西内蓮
そうだな。いただきます
フォークを手に取って、パスタを巻こうとしたとたんに緊張しはじめた。
思えば、西内くんと一緒にご飯を食べるのははじめてだ。
向かい合って座る機会もほとんどない。
整った顔が目の前にあるってだけで、肩に力が入っちゃう!
西内蓮
西内蓮
桜井、ぼーっとしてどうしたの?
桜井心春
桜井心春
ううん、なんでもないよ。さあ、食べようっと
きれいにご飯を食べる子だと思われたくて、いつも以上に丁寧にパスタを巻いて食べた。
──ご飯を食べている間は、学校や趣味など、いろんな話をした。
西内くんが話題を振ってくれたおかげで、少しずつ緊張がほぐれていった。
一番印象に残ったのは、ペットの話。
西内蓮
西内蓮
俺はオスの黒猫を飼ってるよ。ノエルっていう名前で、子供のころから一緒に暮らしてる
桜井心春
桜井心春
猫ちゃんかぁ。いいなあ、かわいいよね
西内くんがペットを飼っているなんて知らなかった。
いつか会ってみたいな。
黒猫といえば、一年前に近所の公園でケガをしていた黒猫を助けたことがあった。
首輪に住所が書いてあったから飼い主のもとに届けられたけど、もしお家がわからなかったらうちで引き取っていたかもしれない。
あの子、今も元気にしているといいな。
そして、一番盛り上がったのは遠足の話だ。
桜井心春
桜井心春
ゴールデンウィークが明けたら遠足だね
西内蓮
西内蓮
今から楽しみだよ
桜井心春
桜井心春
私も!
相づちを打ちつつも、西内くんが遠足を楽しみにしているのはちょっと意外だった。
学校で遠足についての決めごとをしているとき、男子は全体的に騒がしかったけど、西内くんは静かにしていたもの。
感情をあまり表に出さない人なんだね。
西内蓮
西内蓮
この機会に白鳥とも仲良くなれたらと思ってる。まだ溶け込めていないようだから
桜井心春
桜井心春
うん、そうだね。同じ班に千秋ちゃんもいるし、きっと盛り上げてくれるよ
西内蓮
西内蓮
たしかに賀上の存在は心強いな
西内くん、始業式以降も白鳥くんのことを気にかけているんだ。
彼の優しさに心がほんわかしたひとときだった。

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