目黒side.
はぁ、もう最っ悪。
俺以外の男とイチャつくあべちゃんも最悪。
俺の前でってのがもっと最悪。
こんな嫉妬してる俺は1番最悪。
なに?なんでそんなにくっつくの?
わかってる、康二と仲良いんだもんね、知ってるよ。
俺が今まで一回も、嫉妬してるなんて伝えたことないから、そりゃ気づかないかもしれないけどさ。
でも彼氏の前でくっつくのはどうなのかねあべちゃん。
気まづそうにこっちを見て焦る康二と、なんにも分かってなさそうなあべちゃん。
てかあべちゃん、俺と先に約束してたじゃん。忘れちゃったの?
首を傾げて上目遣いをする。
ありえないんだけど。
え、あべちゃんマジでなにしてんの?
嫌って言えよ。
いや康二は悪くないけど。
わたわたと慌てる康二の手を両手で握って、自分の頭にのっけてる。
慌てて手を引っ込める康二と口を尖らせるあべちゃんをみて、俺のイライラがMAXになる。
絞り出たのはめっっっちゃ小さい声。
もっとでかい声で言えよ俺。
彼氏なんだから怒ったっていいだろ俺。
……いや、わかってるけど。
だって俺あべちゃんに嫌われたくないんだもん。
こんぐらいで怒るなんて小さい男って思われたら俺もう、、、
あぁ、情けない。
だけど嫌われたくない。
いままで見せてきた大人の余裕をここで崩す訳にはいかない。
あべちゃんには聞こえなかったみたいでよかった、うんよかった、、、
あーだめだしんどい。
これ以上ここにいたら爆発しそう。
驚いたようなあべちゃんの声を無視して、1人で楽屋を出る。
久しぶりの全員での仕事で、あべちゃんに会える!ってあんなにはしゃいでたのに。
一緒に俺ん家帰ろうねって昨日の夜LINEしてたのに。
タクシーの中で携帯を取り出すと、何個か通知がきていた。
康二から謝罪文。
あべちゃんからは一言だけメッセージが。
『今から家行ってもいい?』
もちろん!待ってる!!なんて、いつもの俺だったら送ってるんだけど。
スタンプなんかも付けるぐらい喜んじゃうんだけど。
今日は、このメッセージも素直に喜べない。
康二がダメだったから俺ん家行くの?
俺と約束してたのは忘れてるの?
……嫉妬を通り越して悲しいよ、
どう返せばいいかも分からなくて、返信しないでそのまま画面を閉じる。
既読無視なんて酷いと思うけど、おれは怒ってるんだぞっていう、、、
あーもうガキみたいだ、
できるだけ何も考えないようにボーッと窓の外を眺めて家に着くのを待つ。
家に帰ってもモヤモヤは続くばかりで、気持ち悪くなってくる。
嫉妬しても平常心でいるにはどうすればいいんだろ。
岩本くん、、はダメだ。
舘さん、舘さんに今度聞こう。
てか、舘さんって嫉妬するのかな。
岩本くんあんまり人とベタベタしないから、舘さんも嫉妬はしないのかな。
舘さんと岩本くんの楽屋でイチャイチャしていた姿を思い出してしまって、余計悲しくなる。
あべちゃんのLINEを見ないようにして携帯を開いて、「忍耐力 鍛え方」と調べる。
なになに、今の行動に対する結果をリアルに想像する…?
今の行動、、、?
康二に嫉妬して、あべちゃんのこと無視して、それで、、、
俺のこと面倒くさくなって、あべちゃんが俺を嫌いになって別れ……
気づいたら涙が溢れていた。
鼻をズビズビと鳴らしながら、服の袖で涙を拭く。
女々しいな俺。格好悪い。
次々に溢れ出す涙に拭くのを諦めて、ソファーの上で体育座りをする。
ピンポーン
チャイムの音で、我に返る。
宅配便かな、
インターホンを押したのはあべちゃんで、もぞもぞと落ち着かない様子がモニターに映る。
どうしよ、いや、出ないわけにはいかないし。
深く息を吸って震える声を止める。
辿々しい喋り方のあべちゃん。
可愛いよ、可愛いけど悲しいよ。
なんでかわかんないけど。
俺、悲しい気分なんだよあべちゃん。
あべちゃんのせいだよ。
それだけ言って通話終了ボタンを押す。
声聞いただけで好きが溢れる。
好き、大好き、あべちゃん。
もう一度チャイムがなって、俺は玄関へ向かう。
ドアを開けると少し息の上がったあべちゃん。
俺も、俺もだよあべちゃん。
会いたかったけど、
なにその気まづそうな顔。
違うよって言ってよ。
めめだけだよって。
だから、なにその顔。
あべちゃんが靴を脱いでいるのを待たずに、1人でリビングへ行く。
小走りでリビングに来たあべちゃんに聞くと、悲しそうな顔で見つめられる。
…は、本当に気づいてないんだ。
冷蔵庫を覗いている俺の後ろからあべちゃんが抱きついてくる。
涙止めたはずなんだけどな、また溢れてきちゃった。
涙でなにも見えないまま、ソファーに連れてかれる。
ぼたぼたと涙を流しながら隣にいるあべちゃんに抱きつく。
身体を引き剥がされて、顔を覗き込まれる。
涙を手で拭われて、あべちゃんの心配そうな顔が見えた。
嫌だ、みないで。
これ以上格好悪いところ見せたくないのに。
なんであべちゃんが泣きそうなの。
話すよ、話すから泣かないで。
あべちゃんの顔が見れなくて俯くと、涙がどんどんソファーに落ちていく。
ぎゅっと首に手を回されて、横から抱きしめられる。
首に抱きつくあべちゃんの腕にぎゅっと力が入る。
あべちゃんの腕を掴んで、そのまま抱きしめる。
身体を離されてあべちゃんに見つめられる。
優しい目で、優しく頬を撫でられて、また泣きそうになる。
あべちゃんの可愛い笑顔。
こんな可愛い可愛いあべちゃんを、今日の俺みたいな気持ちにさせたことがあるなんて、辛い。
もう一度抱きしめて、あべちゃんの頭に顔を埋める。
少し怒ったような顔で俺を見上げるあべちゃん。
そんな顔も可愛いね、大好きだよ。
口を尖らせて眉をひそめている。
上目遣いでそんなの、可愛い。
全部、全部、大好き。
にこにこっと笑うあべちゃんに優しくキスをされた。
あべちゃんの身体を抱きしめてから、唇に軽いキスをたくさんする。
唇を離してあべちゃんを見つめる。
阿部side.
あの時は、まだ付き合ってそんな経ってなくて。
めめが嫉妬しただけで、あんなおおごとになってたんだなぁ〜笑
あの時はめめに嫉妬させないって、悲しい思いさせなくないって頑張ってたけど、なにをしたってめめは妬くから、最近はもう放っといてる。
最近は、嫉妬したらその分甘えてくるようになったし、たくさん甘やかすようにしてる。
まぁ放っときすぎると暴走して俺の腰が終わるから、そこだけ気をつけてるんだけど。
終わり
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。