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第1話

ほわいとでー
1,013
2018/06/18 09:02
あなた

・・・

私は今、菊さんの家の居間で、静かに読書をしている。
 
菊さんは、なんかお仕事が忙しいらしくて構ってもらえなかった。 
 
まあでも、誰もいない静かな空間での読書というのはいいものだ。
 
まさに至福の時───
アルフレッド・F・ジョーンズ
Hey!あなたいるかい?!
あなた

オォ〜マイガァ〜・・・

完全に不覚だった。
 
ここは菊さんの家だ。つまり、彼が出現する確率も高まるのだ。
アルフレッド・F・ジョーンズ
相変わらずあなたは発音悪いな!そういうの、日本で『かたかなえいご』って言うんだろ?Repeat after me!Oh my Got!
あなた

当たり前じゃないですか、こちとら純日本人なんですから。で、何の用です?

スパーンと小気味良い音をさせて襖を開けたアル君。
 
そんなん私がしたら菊さんにこっぴどく叱られるわ。
アルフレッド・F・ジョーンズ
キクに聞いたぞ!今日は『ほわいとでー』っていう、チョコを貰えるイベントなんだろう?チョコ欲しいんだぞ!
あなた

チョコを貰うのは女性の方です

アルフレッド・F・ジョーンズ
Oh!そうなのかい?!でも俺完全にチョコ食べるモードなんだぞ!チョコないのかい?
あなた

えぇ〜・・・?

不満げな顔で言われたので、仕方なく鞄を漁ってみる私。
 
ごそごそと引っ掻き回していると、鞄の底の方で感触が。
 
引っ張り出してみると、なんとチョコのアソートが出てきた。
あなた

お、運いいですねアル君。チョコありましたよ

アルフレッド・F・ジョーンズ
Hooray!それ美味しそうだね!さっそく食べようじゃないか!
あなた

も〜・・・

つくづく私もアル君に甘いと思う。

多分、彼がこういうときに放つ圧倒的末っ子オーラのせいだと思う。

アル君にチョコアソートを袋ごと渡す。
 
するとアル君は嬉々として、チョコレートを頬張り始めた。
あなた

美味しいですか?

アルフレッド・F・ジョーンズ
もちろんなんだぞ!Thanks!
あなた

そりゃ良かったです

もぐもぐしているアル君を眺めていると、ふとしたようにアル君が私の方を向いた。
アルフレッド・F・ジョーンズ
そういえば、ほわいとでーって本当は、男性が女性にチョコを送るんだよね?
あなた

まあ、ざっくり言えばそうですね

本当は、チョコをくれた女性に男性が返す形だけどね。

まあ説明がめんどいので言わない。
アルフレッド・F・ジョーンズ
じゃあ、あなたにもチョコあげるぞ!ちょっと来て!
あなた

はあ?

アル君はそういうとあぐらをかいて、両手をこちらに向けて伸ばした。

訳が分からないが、とりあえずアル君の方へ近づく。

すると、いきなりアル君の腕の中に閉じ込められた。

びっくりして抵抗もできずに固まっていると、顎に手を添えられ、くい、とアル君の方を向かされる。

これまた私が固まっていると、唇にぬくもりと、わずかな甘味。

どうやら、この末っ子もどきは、私の口に口移しでチョコを押し込んでいるらしい。

どろどろと口内を埋める甘いチョコレートに頭がくらくらしてきた頃、ちゅ、とわざとらしいリップ音と共に口が離れた。
アルフレッド・F・ジョーンズ
Happyほわいとでー、なんだぞ!
そう言いながら、私の唇の端についていた溶けたチョコを、わざとらしく舐めとるアル君。

それを受け入れてしまうのだから、私の頭はおかしくなってしまったようだ。

それはきっと、部屋中に充満する甘い香りのせい。

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