第10話

9~救いたい~
249
2019/05/25 02:34
春
あとさ、俺が言うことじゃないけど、あんたは勇気が出せないんじゃなくて、出したくねぇーんじゃねーの?
楓
違う。
春
勇気を出したら次のいじめのターゲットは自分になる。怖くて出せない。違うか?
楓
違う。
春
彩葉ってやつのこと考えらず自分の守りのみ考えて、現実に向き合わず壁を作るばかり。違うか?
楓
違う。違う。そんなんじゃない。
私は怒鳴るようにいった。





なんでかって?
図星だったからだ。
だからあんな言葉しか言えない。
自分のことばかり。
春
違うならいいよ。
ただ俺にはそう見えただけだから。
そういって、榎本は立ち去った。
楓
(あーあ…)
私最低___
放課後私は忘れ物をして、教室に戻った。
そこには彩葉がいた。
ずっと1人で机に書かれた落書きを消していた。
彩葉
彩葉
消えない。
彩葉は髪が長かった。
肩よりも下ぐらい。
だから私じゃなかったら気づかなかったかもしれない。
彩葉が泣いてることを。
孤独で誰にも相談できなくて。
でもいつも笑顔でこんなことがあっても泣かなくて、毎日登校している。
そんな彩葉が泣いている。
机にポタポタと落ちる涙を見た瞬間私は思った。
楓
(救いたい。自分はいいから彩葉を笑顔にしたい。)
初めてだった。
こんな気持ちになるの。
いつも、私を一番に考えていた。
彩葉を救いたいでも自分が大事だった。
でも今回は違う。
自分のことはどうだっていい。
彩葉の笑顔を取り戻したい。
その一心だった。
楓
助けるから。 ボソッ
私は走って家に帰った。

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