*じんたんside
季節はまだ冬。
そろそろ春になるというのに、外はまだまだ冷たい風が吹いている。
そんな中、俺はある人を待っている。
俺の相方のテオくん。
相方でもあって、俺の好きな人でもある。
これは誰にも言えない秘密だけど。
冷たい風が顔に当たって、少し痛い。
俺は着けていたマフラーに顔を埋めた。
手袋、つけてくればよかったな
なんて今思ってもどうもならないことを考えながら冷え切った手と手を擦り合わせる。
夜風にあたりながら、一人つぶやいた
テオくんと並んで目的地に向かう。
夜だからか、お店の照明がやけに眩しく感じた
二人して呟いた。
今日は、いつにも増して夜風が冷たい。
もし俺たちが恋人同士だったら、この冷たい手もテオくんが握ってくれてたのかな?
…何考えてんだろ、俺。
自然とため息が出る。
そんな俺のため息に気が付いたのか、テオくんが歩きながら不思議そうな顔で俺を見た。
心配してくれてるのかな。
それだけの事だけど、俺にとってはすごく嬉しい事だった。
でも迷惑はかけたくない。
ニヤニヤしながら俺を見つめて来るテオくん。
阿保、お前の事で悩んでるんだから言えるわけないでしょうが。
不覚にも腹が立ち、軽くテオくんの頬を叩いた。
そういうと、テオくんは再び前を向いて歩き始めた。
今の俺の気持ちをテオくんに言えたら、どんなに気持ちが軽くなるだろう。
でも俺はこの気持ちは伝えたくなかった。
この気持ちを伝えて気持ち悪がられるのは分かってるし、今の親友という関係を壊したくない。
だから今までもこれからも、ずっとずっと
〝相方〟としてテオくんのそばに居させて下さい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!