第20話

遭遇
992
2019/04/15 08:40
レミside





「行ってらっしゃーい」




日下部くんに引きずられるようにして集まりのために教室を出て行ったあなたを見送る



今日は弟の誕生日だし、
帰りにケーキでも買って帰ろうかな



そう思っていつもの家に帰る道ではなく、
駅前の方に向かって歩いた










何個かあるケーキ屋さんからやっとお店を選んで、
弟の好きなチョコレートケーキホールを買ってお店を出た



ちょっと小さいけど、
また私が稼げるようになってから大きいの買ってやるからなっ



ケーキを抱えてルンルン気分の私



今にも口笛を吹きながらスキップで帰りそうな気持ちを一気に変えるものが目に入った



人混みの中にサラサラの赤髪



私が足を止めると急いだように路地裏に入って視界から消えた















エイジ先生だ



このまま見失ったらもう会えなくなる















私の足は勝手に動いて、
エイジ先生だと確証もないのに走っていた




「すみません、すみません!」




人混みをかき分けるようにして走る



赤髪が消えた路地裏に入るともうそこにあの人はいない



待って、消えないで



その路地裏も走って抜ける



辺りを見渡すと、
道を右に曲がった場所にあの人の後ろ姿




「エイジ先生っ!!」




人違いかもしれないのにそう叫ぶ



赤髪の男の人はゆっくりと立ち止まって、
私の方を振り向いた















『久しぶりだな、宮野』















エイジ先生だった















色々話したいことはある



元気だった?とか



どこにいたの?とか



聞きたいことはたくさんあったのに



私は涙ぐみながらエイジ先生に駆け寄ると




「今までどこにいたの?!何してたの?!何であなたに連絡あげないの?!
あなたがどれだけエイジ先生を待ってるか!あなたのご両親と話した後連絡取れなくなってから、どれだけあの子が泣いたか!
あの子はエイジ先生に他に好きな人ができたんだって、諦めなきゃって言ってる!
だけどこんなに好きなんだから短い時間で忘れられるわけないって!
まだ好きでいさせて、お願いって……。
私達のクラスに転校生が来たの、日下部響くん。
日下部くんは絶対にあなたの事が好きだよ、見てて分かるもん。
ねえ、これ以上あなたを苦しめないでよ、エイジ先生を忘れるためにって日下部くんと付き合わせないでよ!!1回くらい連絡してあげてよ!
私はあなたにはエイジ先生じゃないとお似合いじゃないと思う。
だから、もし日下部くんとあなたが付き合うようなことがあったら、私一生エイジ先生を恨むからね!!」




泣きながら、一生懸命エイジ先生に伝えた



私に見せないだけで、
どれだけあなたが苦しんでるか



親友なんだもん、言わなくたって分かる



エイジ先生は




『ごめん、宮野』




あなたと同じような、苦しい顔をして
それだけ呟いた



これだけ言ったのに、
返事はたったそれだけなの?



エイジ先生はあなたのことが好きなんじゃなかったの?



もう、分かんない




「私、エイジ先生のこと分かんないよ……」




他に言う言葉も思いつかず、
その場から早く立ち去りたい一心で私は家に向かって走り出した

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