第7話

甘い時間
1,447
2019/03/30 12:18
旅行当日


お父さんとお母さんには申し訳ないけど、
レミと京都に旅行に行ってくると言って家を出た


2人ともごめんね、
私が高校卒業したら絶対2人にエイジのこと紹介するからね


小さめのスーツケースをコロコロと転がして、
私の家の最寄り駅から3つ離れたエイジの家の最寄り駅へと電車に乗って向かう


もうエイジは駅に着いているようで、
私が電車内にいる時も「早く来て」とか「まだ?」とか「会いたい」とか色んなLINEが送られてきて少しだけ笑っちゃった


駅に着いて改札を出ると私の愛しい赤髪の人はすぐ見つけられた



『あなた!』



エイジも私を見つけたようで、
私の元に笑顔で駆け寄って来る



「電車ちょっと遅れてた、ごめんね」

『早く会いたいってLINEしたんですけど?』

「私だって会いたかったよ」



少しだけ拗ねてるようだけど、
私がきゅっと手を握ったらすぐに笑顔になって手を握り返してくれた


エイジは私が持っていたスーツケースを右手で持つと、
左手で私の右手を握り直した


2人でエイジの車に荷物を積み込んで車に乗り込む



『えーっと、住所どこだっけ……』



エイジがカーナビを設定している時に、
こっそりと持ってきていたカメラでエイジを撮った


エイジの横顔と、エイジが運転する時だけかけるサングラスが大好きだから



『なに撮ってんだよ』



そう言いながらもちゃんとカメラ目線とポーズは忘れないエイジ



「いい感じだよ」



そう言うと、
カメラをひょいっと取られて肩をグイッと引き寄せられる


思わず目を瞑ったと同時に唇に柔らかい感触


……それにカシャッという乾いたシャッター音


唇に柔らかい感触がなくなったあとに目を開けると、
エイジが写真を確認しながらニヤニヤしている



「ちょっと、貸して!」



カメラを取り上げて今撮った写真を見ると、
私とエイジがキスをしてる写真が画質よく撮られていた



『旅行デートの記念すべき1枚目』



そう言ってエイジはサングラスをクイッと上に上げる



「もう、バカ」



そう言うけど、
この写真を私が気に入ったことなんて内緒


笑いながら車のエンジンをかけたエイジに気付かれないように、
カメラの写真のデータをケータイに移した

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