第30話

大好きな君へ
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2019/05/01 06:27
エイジside





2年間会えてなかったあなたはめちゃくちゃ綺麗になってた



髪の毛も伸びて、背もちょっと高くなって、大人っぽくて



泣いて俺に抱きついてきたあなたを見て、
めちゃくちゃ辛い思いさせてたんだなって



俺もLINEしてなくて、電話できなくて辛かったけど



それより何倍も、何十倍も傷つけたんだなって思った










2人で開かずの部屋を出ると、
校門で待っていた宮野に案の定ガチギレされてめっちゃ怒られた




「私先生のこと嫌いになったからね!」




そう言ってはあなたをぎゅーっと抱きしめて、
目で「渡さん!」って訴えてくる




『ごめん、それはほんとに俺が悪かった。
もう絶対1人にしねぇから、あなた返せ!』

「嫌だ!あなたは私と結婚する!」




宮野と手を繋ぎながら、
俺と喧嘩しているのを見てケラケラ笑うあなた



久しぶりだなあ、その笑顔



やっぱりあなたは笑った方が可愛い



するっとあなたの頬を撫でると、
仕方ないなぁと宮野はあなたを離した




「またこんなことがあったら、私ほんとにあなたのこと奪っちゃうからね」




その後もネチネチと怒られ、
またクラスの打ち上げでねと手を振って宮野は帰って行った



しばらく沈黙が続くと、
グランドから「あなた!」と名前を呼ばれてあなたが振り向く




「あ、日下部くん」




俺よりかは低い身長、だけどあなたよりは高くて、顔も結構整っているイケメン



俺が教師やってる時はいなかったし、
こいつが宮野が言ってたあなたのことが好きな転校生か




「……この人は?」




そいつは俺を少しだけ睨むように見つめた




『あなたの彼氏のエイジです、在学中にあなたが色々迷惑かけちゃったみたいで、すみません』




俺がそう言って少し口角を上げる



「ちょっと、エイジ」ってクイッとスーツの袖をあなたが引っ張った




「ほんとにあなたがあなたを幸せにできるんですか?
何回も何回も泣いてたんですよ、こいつ」




少しだけ怒ったような口調




『それは申し訳ないと思ってます。
だけど、こいつは俺しか眼中にないから』




そう言ってあなたを抱き寄せた



切なそうな顔をして、
でもゆっくり俺とあなたの顔を見て




「俺、まだあなたのこと好きなんで、あなたがもし次あなたのこと泣かせたら俺が奪いますよ」




そう言った




『離しませんので、ご心配なく』




これ以上は喧嘩になると思ったのか、
俺の手を引いて「じゃあね、また打ち上げで!」とあなたは家に向かって歩き出した










『あなたさんを迎えに来ました』




2年前と同じように、
机を挟んであなたのご両親と向き合う




「よく来てくれた」




お父さんはそう言い、
お母さんは口を抑えて嗚咽を漏らさないようにしていた




『あなたさんと、結婚を考えたお付き合いができたらと思っています。
2年越しになりましたが、交際を認めて下さい、お願いします』




あなたと2人で頭を下げる



しばらくの沈黙のあと




「顔を上げなさい」




お父さんの声で顔を上げると、
スッと手が俺の前に差し出された




「俺と、お母さんの大事な一人娘を、どうかよろしくお願いします」




嬉しかった



隣であなたはすでに泣いていた



俺はお父さんの手を力強く掴んで




『一生大切にします!!』




そう答えた















2年離れて、連絡も取らずにいて



そりゃあ女の人と出会う機会は教師やってる頃よりずっと増えたよ



でも女の人と話してても自然にあなたのことを考えてた



今何してるかなあ、どうせ授業サボってるんだろうな、机に突っ伏して寝て怒られてるんだろうな



あなたの顔が見たい、声が聞きたい、温もりに触れたい、抱きしめたい



何度も何度もそう思って、
LINEにメッセージを入れては消して、を繰り返した



お父さんとお母さんとの約束を守るため



あなたを一生手放さないため



俺と結婚する相手はあなたしかいないから



俺の隣にいてほしいのはあなたしかいないから




『あなた』

「んー?」

『俺ね、教師辞めてから、幼なじみたちに誘われてYouTubeやってんだ。
アバンティーズっていうグループで、東京拠点にやってる』




そらちぃ、ツリメ、リクヲ



久しぶりに連絡があったかと思ったら、
「教師辞めたんだろ?俺らと一緒にYouTubeやろうぜ」って



まだ辞めて間もなかったし、あなたのこともあって迷ってたけど、こいつらの誘いに間違いはないから




『まだ理解されてないことはたくさんある職業だけど、めちゃくちゃ楽しいよ』




教師辞めてYouTubeやり始めてよかったかもな、って思ってるよ



こんな俺でも着いてきてくれるか



一緒に暮らそう、俺の所で




『不安定な職業だけど、こんな俺でもいいか?』




俺の隣にちょこんと座るあなたに聞く




「エイジが選んだ未来だもん、私は否定しないよ。
エイジが楽しいのならそれでいい、不安定でも楽しそうじゃん」




そう言ってあなたは微笑む



ああ、やっぱり俺はあなたに惚れてるんだなあって



あなたじゃなきゃダメなんだなあって思う




『ずっと俺と一緒にいて』

「ずっと一緒にいるよ」




どちらからともなく唇を重ねる















俺はあなたがいなきゃダメで



あなたは俺がいなきゃダメ



これからもずっとずっと俺はあなたに恋するんだろうな



こんな俺を選んでくれてありがとう



傷つける時も、喧嘩する時もあるかもだけど



これからもずっと、あなたが大好きだよ










end

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