藤井side
望が虹になってからまだ2日しか経ってない夕方。
携帯に望が入院していた病院から
電話がかかってきた。
あれ以来…あの病院には行ってない。俺は。
神ちゃんと淳太が着替え等を取りに行った
位しか行ってないらしい。
もう関わらないはずの所からの電話に
ちょっぴり驚きつつ慣れた手つきで
電話に出て右耳に当てた。
📱「ご無沙汰しております。
小瀧望さんの担当をしておりました医師です。
730号室を掃除していたら小瀧さんの
私物が出てきたので渡したいのですが…
今から病院に来てもらうのは可能ですか?」
📱「底まで多くは無いです。
日記帳とアルバムと…短冊です。」
短冊…
飾ったままのやつかな…。
そしたらきっと俺らのもあるやつか…。
あれを1回でも望は見たんやろうか。
望の願いが書いた短冊は
これからどうするんやろう。
俺らの願いが書いた短冊は
これからどうするんやろう。
所詮、例えただの「紙」
でも俺らからしたら普通の「紙」ちゃうくて
一年に一回の行事で使ったものなんて
そんなん破棄はれてまうけど
俺はその「紙」を破棄したらあかん気がして
今すぐにでも取りに行きたくなった。
📱「分かりました。そのままの形で
こちらでちゃんと保管しておきますので
病院に着いたら私の名前を受付で言ってください。」
📱「いえいえ。ではお気を付けてお越しください。」
あの短冊は唯一望と繋がっているものやと思った。
あの短冊ごとこの部屋のどこかに…
いや望がちゃんと見れる場所に置いておけば
望がちゃんと見守ってくれると思うから…。
今から迎えに行くから
それまでちょっと遠い空で虹を架けてな?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。