重岡side
マネージャーから流星と連絡が付かないと
俺の携帯から電話が来た。
不安になった俺も携帯に電話とメールを入れた。
ここだけの話、流星自身は気付いてないと
思うけど、小瀧が死んでからあいつは変わった。
変に食べなくなったり、どこか上の空やったり…。
何かするんちゃうかとヒヤヒヤして
落ち着かなかったが流星から返信があった後
直ぐに安心したけど放っておけなくて
パパッと荷物を纏めて流星の家まで向かった。
流星が病院から帰ってくるまでに
俺の方が先に着いてしまったらしく
流星の家の近くで車を動かしながら
流星を待っていたら、後ろから流星の車が
見えたので端に避けた。
流星の家の近くの駐車場に車を止めて
流星と同じタイミングで家に入った。
サングラスを外した流星の目は
赤くなっていて、あぁ泣いてたんやなって
分かった。
流星の手には大きな紙袋を持っていて
それが原因なんやとすぐに分かった。
そない散らかってるようには見えへんけど
流星からしたら散らかってるように見えるらしく
適当にカバンやらを足でパパッと端に避けた。
ダイニングテーブルの上も紙がバラバラ乗っていて
何乗ってるんやろうと紙を見たら
どれも全部写真やった。
その写真全てに小瀧が写っているもので
懐かしいものから最近のものまで揃っていた。
台所の方で流星が声をかけたのを聞き
台所の方まで行くと流星がお茶を入れてくれて
俺はそのコップを貰い近くの椅子に座った。
何口か飲んだあと目の前には流星が座った。
ぽつりぽつり流星が口を開き
今日のことを話し始めた。
そう言って流星は立ち上がり
ソファーに置いてある紙袋を持ってきて
俺の前に紙袋から取り出して物を置いた。
頭を搔きながらぼそっと呟いた流星。
この耳で確かに「辛い」とか「嫌だ」って
聞いたことないからな…。
俺も気になってとりあえず一番最初に取り出した
日記帳をパラパラとめくって行った。
間違っちゃいない、良かったやろ?
俺らの一言トーク良かったやろ?
少クラ、確かに違和感やったわ。
でもお前置いていけへんって。
神ちゃんに見せとくな…?
読み終わったあと、俺は日記帳の裏表紙を見た。
あの時の言葉がまだ綺麗に残されていた。
小瀧の管理が良かったのか
たまたま書いた時間がそれほど経っていないのか。
日記帳に多少小瀧の弱音は書かれてたとはいえ
まだ完璧に見つかってはいない。
どこに書いてあるんやろう。
日記帳ってだいたい書くやん。
弱音とかその日の思いとか…
なんで書いてないねん…。
…その時やった。
見つけた。
あいつの本音。
こんな所に書くなよ。小瀧…。
【うまくいかないことは、すべて自分のせい】
【辛いんよ。頑張れなんて言わんといて…。】
【待ってるなんて分からんやん。】
【怖いんよ、死ぬの。】
【なんで全て空回りするんやろう。】
【誰か…誰でもいいから、代わってや…。】
日記の後ろの数枚のページに
小瀧の字で確かに書かれていた。
なんでこんな所に書くねん。
なんで溜め込むん?
なぁ…なぁ………
隠れた思いに気がついた時
隠された思いに気がついた時
その時は既に遅くて
何もかもが上手くいかず
答えが聞きたい「なんで?」も
声が聞きたい本人からは何も返ってくるわけもなく
独り言のようにかき消され
一緒解けない謎としてずっと残されていく。
大きな問題も
小さな問題も
俺らにとったらもう一生解けない謎。
小瀧ってなんでこんなに隠すの上手いんやろう…。
答えが分からないなら
俺らは思い出に浸って
その中から正しい答えを見つけ出す。
それくらいしたってええやろ?
小瀧
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。