第17話

本番
852
2020/12/06 15:46
~ザカオside~
動画を撮り終えた俺達は次の撮影の準備をしている。
今度はある意味本番。
俺達の…報告動画。
さっきまでの楽しい雰囲気とは裏腹に
何をどう話すか。誰が言うか。何があったか。
いつもの動画とは違う。
真剣な、真面目な動画。
モ「とりあえず、最初の説明はマサイがしよう。その後ンダホにバトンタッチ。俺も間間に話すよ。」
ぺ「俺とダーマはザカオとシルクをカバーすればいい?」
モ「うん、お願い。シルク、俺らがちゃんと説明するから、そのーなんていうか…安心?して」
シ「あ…うん」
みんな真剣だ。
どんなに喧嘩しても崩れない団結力がここにはある。
ただ……
俺は…今の俺には…何も出来ない。
何をすればいいんだろう。
こういう真面目な場面は正直苦手だ。
いつもの撮影とは違えば、ダンスのステージとも違う。
嫌な緊張感が走る。
俺は無意識にダーマの服の裾を握った。
ダ「ザカオ、大丈夫。怖くないからな。」
そう言って俺の頭を撫でてくれる。
もう25を過ぎた大人。でも、それが酷く安心した。
なるべく…できるだけ嫌なことは考えないように。
1度考え出したら止まらなくなる。
大丈夫……きっと。
モ「それじゃあ撮影しよう」
ピッ
マ「どうも、フィッシャーズのマサイです。」
モ「モトキ」
ン「ンダホ」
ぺ「ぺけたん」
ダ「ダーマ」
ザ「あ、ザ、ザカオ」
シ「えっと、シルク」
静かな雰囲気で、真面目なトーンで始まる撮影。
怖い…何かやらかしそうで。
マ「皆さん。今日は少し…いやだいぶ
真面目なお話があります。」
マ「本当は生配信の方がいいんだと思います。しかし今回は、こちら側の都合によりいつもの動画と変わらない形に致しました。」
マ「編集はあまり入れません。今回の動画は皆さんに笑っていただけるものでは無いです。中には気分を害して、もう…ファンをやめる。そういった方も出るかもしれません。それも承知の上、我々はこの動画をあげさせていただきます。」
いつものマサイとは違う。
前にマサイは
マ『俺緊張すると噛んじゃうんだよね‪w』
と言っていた。
きっと今もすごく緊張している。
でも…第1にフィッシャーズを思い続けてきたマサイだからこそ
視聴者さんへしっかり伝えたいと思っているのだろう。
マ「何があったのか…ンダホ君から話して貰います。」
ン「はい。えー、単刀直入に言います。僕達は1度、解散しました。」
ン「は?と思う人の方が多い、もしくは全員だと思います。…実は先日僕達は大きな喧嘩をしました。」
ン「その喧嘩が起きたことにより、僕らのリーダー、シルクロードは記憶を失ってしまいました。」
ン「理解が追いつかない人もいるとは思いますが、1度僕の話を聞いて欲しいです。…喧嘩が起きた原因はこの僕です。」
ン「僕はシルクが今までずっっっと大切にしていた尚且つ、視聴者さんから頂いた宝物を壊してしまいました。」
ンダホが席を立ち壊した物を持ってきた。
ン「皆さんも見覚えがあるのではないでしょうか?…こちらです…。」
そういってだほちゃんがカメラの前に例の物を出した。
ン「昔の動画で少し映っていたと思います。これはウオタミの皆さんから頂いた額縁です。そしてこっちは…僕らが初めて100万人を突破した時に頂いた金の盾。」
ン「見ての通り壊れています。…いや、僕が壊してしまいました。」
ン「しかも僕は壊してしまったにも関わらず、軽いノリで流そうとしてしまいました。言い訳に過ぎませんがその時は寝起きで完璧に頭が回ってない時でした。それからシルクと掴み合いの喧嘩になり、止めに入ってくれたモトキやマサイを無視し…その結果リーダーであるシルクが『解散しよう』と言い、1日程度ではありますが、解散しました。」
モ「私やマサイも止めに入ったとはいえ2人の意見も聞かず、一方的にシルクを責めすぎたと反省しております。」
緊張が走る空気。
俺はだんだんと怖くなり呼吸が荒くなってきた。
ザ「……は、ぁ…はぁ…ぁ…」
ダ「ん?ザカオ?大丈夫か?」
ザ「ひゅ…っ、は、ぁ…ご、め…」
ダ「すまねえ!ザカオあっちの部屋で落ち着かせてくる!」
ぺ「俺も行くよ!みんなは撮ってて!」
俺はダーマに抱えられ他の部屋へ連れてかれた。

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