~ンダホside~
俺は、いつからこんなにいい加減になったんだろう。
あれは完全に俺が悪かった。
分かってる。
俺は…
シルクの優しさに甘えていた。
あれがどんなに大切なものか、
そんなの分かってる。
特に、シルクにとってはかけがえのないもの。
今まで俺は何度もカメラを壊したり、
待ち合わせに遅刻したり
色々とやらかしてきた。
でも、
確かに怒られるけど、その後はいつだって笑顔に戻った。
初めてだ。
あんなに怒らせたのは。
殴られたとこが痛い。
シルクはこれ以上の痛みを心に負っている。
謝ろうと思った。
シルクの家に行って
もし開けてもらえたら
玄関だろうと地面だろうと土下座するつもりだった。
家を出ようとした時
『シルクが記憶喪失になった』
その連絡が来た。
嘘だって思った。
信じたくなかった。
でも、そのたった1つのメッセージで
全てを信じさせられた。
俺は立ち尽くした。
呆然とそのメッセージを眺めていた。
シルクの元へ行くべきか
あっちは忘れてるから無理に会わない方がいいか
わからない。
だって、俺
バカだから。
大バカだから。
シルク…。
今謝ったところで、
相手はなんの事かわからない。
許してもらえたとしても
それは本心ではない。
でも、それでも、
会いたい。
俺は玄関を駆け出し、シルクの家へ向かった。
もう一度会って
謝って
もう一度
『友達』になりたいから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。