~シルクside~
いつも俺が寝ている部屋。
昼間だけど、カーテンは締め切られていて
何かから隠されているような…
逆に隠れているような…そんな感じだった。
好きな漫画や好きな食べ物、だいたいは覚えている。
なのに…『あの人達』が誰なのか一向に思い出せない。
何か大事なこと
何か……すごく大好きだったことを忘れている
気がする…だけ。
不確かな記憶、確証のない記憶が俺の中で行き来する。
ガチャ
兄「…おい、ちび。」
兄貴が部屋に入ってきた。
シ「ん?あの人達は?」
兄「お前に、謝ることとか言いたいことがあるんだとよ。だから、来て欲しいって」
謝ること?言いたいこと?
俺とあの人達はどんな関係なの?
俺は今までどうやって生きてきたのだろう。
こんな良いマンションの一室で一人暮らしなんて。
どんな仕事をしていたんだっけ?
なんでかな…?
思い出したい、気になるのに、
思い出したくないようなこの気持ちは…。
もし今ここで断ったら?
また1からやり直せる?
新しい世界へ羽ばたける?
…
シ「わかった。今行くよ」
無理だった。断れなかった。
絶対嫌な方向になる。
絶対面倒なことになってしまう。
…なのに、
やっぱり思い出したくて
あの人達のことをちゃんと知りたくて
そして…兄に『そんな顔』をして欲しくなくて。
俺は重い体を起こし、立ち上がった。
ドアに向かう足取りが重い。
誰かに行くなって言われてるのかな?
分からない。
でも…でもね、行かなきゃいけないんだ。
そんな気がする。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。