第13話

諦めない
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2019/12/29 07:11
~ンダホside~
ガチャ
ン「!!シルク!!」
シ「……」
シルクが部屋から出てきてくれた。
でも…
いつもの元気は欠片もなかった。
下を向いて俺らから少しでも離れたいかのように
隅っこに行く。
沈黙が流れた。
分かってる。
俺が話始めなきゃ…。
頑張れよ俺!ごめんなさい。って言えよ!
シルクにこれ以上辛い思いさせてんじゃねーよ!
ン「あ…えっと、あぅ…」
俺はいつでもこうだ。
大事な時に大事なことを言えない。
ほとんどテンションで生きているようなもの。
こんな雰囲気…慣れてない。
こうやって、いつもモトキやシルクが助けてくれる。
俺らの失敗を拭ってくれるのは
いつだってシルクだった。
俺らのリーダーは誰にも負けないくらい強かった。
『完璧』『出来ないことない』『天才』
そんなシルクにだって苦手なものはある。
ネズミとか冷えピタとか、箸も苦手なんだっけ。
折っちゃうんだよね‪‪w…なんでだよ‪w‪w‪w
他にも、食事が下手なんだっけ?


あ、あと忘れちゃいけない料理か‪w
スポーツが得意だったり歌が上手かったり
絵が上手で頭が良くて…etc
でもそれはさ、シルクが努力してるからなんだよ。
生まれ持っての才能…それは多分
『諦めない』ってことなんじゃないかな。
シルクは諦めない心で頑張ってきた。
スポーツとか筋トレだって諦めなかったから
得意になってあんなにムキムキになって。
歌だって音程のとり方知らなきゃ音痴だし
絵だってどうしたらバランスを取れるか分からないと変になるじゃん。
たくさん勉強してきたから頭も良いんだ。
全部諦めなかったから。
だからシルクは俺らに対しても諦めなかったんだ。
簡単に見捨てず、どうしたら楽しく過ごせるか。
全部考えていたんだよ。
俺らがそれを見習わなくてどうする?
ン「シルク!」
シ「…えっと…俺?」
ン「そうだよ!お前 はシルクロードって名前なの!俺らは中学からのイツメンで、今まで一緒に遊んできた仲なんだよ!それでさ、今はこのみんなでYouTuberって仕事をしてるの!」
シ「…YouTuber?」
覚えてないなら思い出させる。
ン「そう!そうだ!コレ見て」
俺はスマホで動画を見せた。
シルクが1番好きなアスレチックの動画。
動画「どうも!Fischer'sシルクと〜…」
動画「おい何やってんだよ‪w‪w‪w」
動画「ア゙ー!落ちた!」
動画「動画みてくれてありがとう!」
動画「せーの!アデュー!!!!!!!」
見終わって俺は改めて
シルクの前に直った。
動画を見ていたシルクは普通に笑っていた。
途中にも『面白い』と発言していた。
でもそれは、1視聴者としての目線。
俺らの思い出からの言葉ではない。
俺はもう一度あの笑顔を見たい。
他人じゃなくて友達に戻りたい。
ン「これが、俺たちの仕事。それからシルク、君が記憶喪失になったのは俺たちの…いや、俺のせいなんだ!」
シ「…あなたが?」
『あなた』
その言葉ってこんなにも悲しいものだったっけ?
今考えれば俺、自己紹介もしてなかったんだな。
ン「俺、ンダホっていいます!本名はもちろん違うけど、今はこの名前で思い出して欲しい!俺は、シルクがずっと大切にしていたものを壊したんだ。なのに、謝りもしないでいつものようにふざけていて。クズなやつだと思われていい!でもほんとに、これだけは言わせて欲しい…」
俺は、シルクの目をしっかり見て言った。
ン「ほんとにごめんなさい!今のシルクに言ったって何のことか分からないだろうし、そんな時に謝ってもずるいって分かってる!でも、俺は…もう一度シルクと友達になりたいです!もう一度一緒にYouTuberやりたいです!」
言いたいことは言った。
俺は毎度毎度、後先を考えないで物事を言う。
だから英語禁止でも簡単に言っちゃうし、
今だって…もしここで断られたらなんて考えてない。
でもさ、シルクが無理だとしても俺は諦めない。
シルクが興味を示してくれるまで待つつもり。
シルク…応えを聞かせて。

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