第69話

167
2023/05/28 03:00
乙音澪おとねみお
長年調べ続けた結果、ついに「四面楚歌」のボスは若葉の両親であることが確定したわ。やはり美琴の予想は正しかったようね。
師匠がそう言った瞬間、わたしは頭が真っ白になった。
"「四面楚歌」のボスは私の両親"…?何を言って…?
私が混乱するのをお構い無しに師匠は言葉を続ける。
乙音澪おとねみお
なので、長年続けていた任務は一段落ついたわ。
柊美琴ひいらぎみこと
まさか「四面楚歌」のボスを探し出すために容疑者の娘である若葉ちゃんをわざわざ「百花繚乱」に入れるなんてね〜…
美琴さんはヤレヤレというように肩をすくめた。
し、師匠は私を「四面楚歌」のボスを炙り出すためにこの「百花繚乱」に入れたということ…?
楠若葉くすのきわかば
嘘だ…
私の口から無意識に言葉が漏れた。そうだ、嘘だ。嘘なんだよ、こんなの。きっともうすぐ陽菜が「ドッキリでした〜」って言って、みんな、笑って…。
楠若葉くすのきわかば
はぁはぁ…ッ
そう思いながらも息は苦しくなり、視界がぼやける。目に溜まっていた涙が溢れるのと同時に私は「百花繚乱」のみんなから一歩下がった。
蒼乃麗華あおのれいか
…!!
その瞬間、麗華さんと目が合う。
みんな
!?
そして、みんなとも目が合う。合ってしまった。
乙音澪おとねみお
若葉…?
師匠がそう言いながら大きく目を見開いた。
如月陽菜きさらぎひな
わ、若葉…!ち、違うの!これは…!
陽菜が泣きそうになりながら私に近づく。
楠若葉くすのきわかば
ち、近づかないで!!!
私は目をつぶって無意識にそう叫んでいた。
如月陽菜きさらぎひな
ッッ!
恐る恐る目を開けると目から涙を流して蒼い顔をした陽菜がいた。
楠若葉くすのきわかば
い、いや…ッち、違…ッ
私は混乱して口に手を当てる。涙は止まることなく流れ続けている。
乙音澪おとねみお
若葉。落ち着いて。一旦話し合いましょう。
師匠が私に言い聞かせるようにゆっくりと言う。
柊美琴ひいらぎみこと
そうだよ、若葉ちゃん。色々と誤解が生じているみたいだしね。
美琴さんがそういうとみんな頷く。
楠若葉くすのきわかば
話し合う?誤解?…いえ、違います。私が…ツ、私が聞きたいのは一つだけ…ツ
そう言って私は大きく深呼吸をする。
楠若葉くすのきわかば
今の話は…本当なんですか?
私はみんなに聞こえるように大きな声で言ったつもりだったがそれとは全く違う、小さくてかすれた声が私の口から出た。
乙音澪おとねみお
…えぇ。
師匠がそう言った瞬間、私の中にある心が砕けた音がした。
楠若葉くすのきわかば
はは、はははっ…そう、だったんだ。そっか。
私の口から乾いた笑いがこぼれる。
九条渚くじょうなぎさ
若葉!それでも───
誰かが何か言っているけどもう何も聞こえない。
楠若葉くすのきわかば
私を、騙してたんですね。みんな、ずっとずっと…ずっと…ツ
楠若葉くすのきわかば
「四面楚歌」のボスを炙り出すために、その為だけに私を…!!
そう叫んで私はみんなとすごした日々を思い出す。      
あぁ、あれも…全部…嘘、だったんだ。
楠若葉くすのきわかば
ッッッ!!
私は口をかみしめながら拠点を走って出ていった。
楠若葉くすのきわかば
はぁはぁ…どう、しッて…ッ
私は走りながらそう疑問を口にする。だが、答えてくれる人はいない。
楠若葉くすのきわかば
みんな、信じて…た、のに…ッ
みんなのことを友達だって、大切な仲間だって思っていたのは私だけだったの??
楠若葉くすのきわかば
…でも。
でも私のことをどうも思っていなかったら…陽菜は、陽菜はどうなるの?どうして…私が陽菜を拒絶した時、泣いていたんだろう…?
楠若葉くすのきわかば
まさか…本当は…!いや、そんなこと…
やっぱりみんなのこと信じたいって思ってるなぁ…私。
楠若葉くすのきわかば
ッッ!?す、すみませ…ッ
前を見ていなかったせいか、誰かにぶつかってしまった。
???
お前…楠若葉か?
楠若葉くすのきわかば
えっ…
そう聞かれてハッとする。この人…只者ただものではない…!油断してて気づくのが遅れた…!
楠若葉くすのきわかば
誰っ!?
そう相手に尋ねながら距離を取る。
???
やはり楠若葉か。
楠若葉くすのきわかば
どうして私の名前を?
私は戦闘態勢に入るために持っていたバッグを地面に置く。
???
それはもうすぐわかるさ。嫌でもな。
次の瞬間後ろから衝撃が走る。
楠若葉くすのきわかば
アガ…ッ!まさか…後ろ…にも…ッ
しかし、もう手遅れだ。私は地面へと倒れ、意識が薄れていく。
???
任務完了だな。
その声と共に私の意識は途切れた。

プリ小説オーディオドラマ