師匠がそう言った瞬間、わたしは頭が真っ白になった。
"「四面楚歌」のボスは私の両親"…?何を言って…?
私が混乱するのをお構い無しに師匠は言葉を続ける。
美琴さんはヤレヤレというように肩を竦めた。
し、師匠は私を「四面楚歌」のボスを炙り出すためにこの「百花繚乱」に入れたということ…?
私の口から無意識に言葉が漏れた。そうだ、嘘だ。嘘なんだよ、こんなの。きっともうすぐ陽菜が「ドッキリでした〜」って言って、みんな、笑って…。
そう思いながらも息は苦しくなり、視界がぼやける。目に溜まっていた涙が溢れるのと同時に私は「百花繚乱」のみんなから一歩下がった。
その瞬間、麗華さんと目が合う。
そして、みんなとも目が合う。合ってしまった。
師匠がそう言いながら大きく目を見開いた。
陽菜が泣きそうになりながら私に近づく。
私は目をつぶって無意識にそう叫んでいた。
恐る恐る目を開けると目から涙を流して蒼い顔をした陽菜がいた。
私は混乱して口に手を当てる。涙は止まることなく流れ続けている。
師匠が私に言い聞かせるようにゆっくりと言う。
美琴さんがそういうとみんな頷く。
そう言って私は大きく深呼吸をする。
私はみんなに聞こえるように大きな声で言ったつもりだったがそれとは全く違う、小さくてかすれた声が私の口から出た。
師匠がそう言った瞬間、私の中にある心が砕けた音がした。
私の口から乾いた笑いがこぼれる。
誰かが何か言っているけどもう何も聞こえない。
そう叫んで私はみんなとすごした日々を思い出す。
あぁ、あれも…全部…嘘、だったんだ。
私は口をかみしめながら拠点を走って出ていった。
私は走りながらそう疑問を口にする。だが、答えてくれる人はいない。
みんなのことを友達だって、大切な仲間だって思っていたのは私だけだったの??
でも私のことをどうも思っていなかったら…陽菜は、陽菜はどうなるの?どうして…私が陽菜を拒絶した時、泣いていたんだろう…?
やっぱりみんなのこと信じたいって思ってるなぁ…私。
前を見ていなかったせいか、誰かにぶつかってしまった。
そう聞かれてハッとする。この人…只者ではない…!油断してて気づくのが遅れた…!
そう相手に尋ねながら距離を取る。
私は戦闘態勢に入るために持っていたバッグを地面に置く。
次の瞬間後ろから衝撃が走る。
しかし、もう手遅れだ。私は地面へと倒れ、意識が薄れていく。
その声と共に私の意識は途切れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!