第66話

師匠とデート2
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2023/05/07 03:13
ドアを開けた師匠。その中で待っていた人物は──
空虚くうきょ
あ!来てくれたんだ!
空疎くうそ
久しぶりですね、紅炎…いや、若葉さん。
2人はそう言って笑った。
楠若葉くすのきわかば
え……えっ!!
私は驚いて師匠の顔を見る。
乙音澪おとねみお
黙っててごめんなさい。若葉を驚かしたくて…。
楠若葉くすのきわかば
い、いえ…大丈夫です…ッ…あの…なんだろ…私…嬉しいです…ッ!2人が無事で!
私が途切れ途切れにそう胸にある気持ちを言葉にすると3人は目を合わせて微笑んだ。
愛芽あやめ
じゃあじゃあ〜!改めてご挨拶!!私の名前は愛芽あやめでー?
愛翔まなと
愛翔まなとだ。
愛芽あやめ
ちなみに名付け親は私達と澪さんだよ〜!一緒に考えたんだよねー?
そう言って空虚──否、愛芽は師匠の顔を覗き込むようにしてそう尋ねた。
乙音澪おとねみお
えぇ、気に入ってくれたみたいで嬉しいわ。愛芽、愛翔。
愛翔まなと
名前を呼ばれる…これだけで心ってこんなにも温かくなるんですね…。
愛翔はそう言って胸に手を当てた。
愛芽あやめ
お兄ちゃん、これからはずっとそうだよ。もうあの名前は捨てた。ここから新しく私たちの人生を歩んでいこう…!
愛翔まなと
あぁ…愛芽。
そう言って2人は手を繋いでお互いのおでことおでこをくっつけた。そんな2人を見ていると私が今普通に暮らせていることがとても幸せに感じる。
愛芽あやめ
それもこれも全て若葉さんのおかげだね…。ありがとう、若葉さん!
愛翔まなと
そうだな、愛芽。本当にありがとうございました、若葉さん。
私がそう考え込んでいると2人は私の方を見てお礼を述べた。
楠若葉くすのきわかば
え、いや、私は特に何もしてないよ!?
2人を外まで連れ出したのは師匠だし、2人を含め私たちを身をもって助けてくれたのは妖艶だ。
乙音澪おとねみお
いいえ、若葉。あなたがいなければ恐らくこの場に2人はいなかったわ。
愛芽あやめ
そうだよ!若葉さん!
愛翔まなと
なんとお礼を言えばいいのか…
3人がそう次々にそう言って私を見る。3人がそう言ってくれるなら少しは活躍したと思ってもいいの…かな。
楠若葉くすのきわかば
ふふふっ、ありがとうございます、みんな!
楠若葉くすのきわかば
それと、さっきから気になってるんだけど「若葉さん」っていうのはなんか距離感じるなぁ〜
私はチラチラと2人の方を見ながらそういう。
愛芽あやめ
あははっ、わかった!若葉お姉ちゃん!
楠若葉くすのきわかば
え、「若葉お姉ちゃん」!?
私が驚いて声を上げると愛芽は悲しそうなめで私を見た。
愛芽あやめ
あ、嫌だった…?
楠若葉くすのきわかば
え、いや、嫌とかじゃなくてそ、その私がおね…お姉ちゃん…か。えへへ
私が「お姉ちゃん」か…。いや〜私今まで呼ばれたことがなかったから何だか新鮮〜!!
愛翔まなと
うん、喜んでいるみたいだ。良かったな、愛芽。
愛芽あやめ
あははっ、そうだねー!
2人はそう言って笑いあった。
乙音澪おとねみお
はいはい、若葉。そろそろ戻ってきなさい。
楠若葉くすのきわかば
ハッ、師匠!すみません、つい…
しまった。初「お姉ちゃん」でつい照れてしまった。
愛芽あやめ
もー!大丈夫?"若葉お姉ちゃん"…?
愛翔まなと
そんなに照れないで下さいよ、"若葉お姉ちゃん"…??
2人は上目遣いでそう言う。
楠若葉くすのきわかば
「若葉お姉ちゃん」…ッ!しかも2人から…ッえへ、えへへへ
乙音澪おとねみお
ちょっと、2人ともわざとしているわね…!
師匠が困り顔でそう言う。
愛芽あやめ
えっへへー、バレちゃったか〜!許してよ〜澪お姉ちゃん!
乙音澪おとねみお
ちなみにそれ、私には効かないわよ。
愛芽の上目遣い攻撃を一刀両断する師匠。
愛芽あやめ
えぇ〜そんなぁ〜
愛翔まなと
うちの可愛い妹の上目遣いが効かないのか…。嘘だろ…?
「いや、妹のことをなんだと思ってるの!?」という陽菜の声が聞こえてきた気がするが多分気のせいだろう。今ここにツッコミ役がいないからだ。
楠若葉くすのきわかば
2人とも、何かあったらこの若葉お姉ちゃんに全て任せなさい!
私は胸に手を当ててそう言った。そう、この2人を守るってちゃんと──
楠若葉くすのきわかば
約束したから。妖艶と。
私がその名前を口に出すと2人は目を見開いた。
愛芽あやめ
妖艶に…ッ?
楠若葉くすのきわかば
うん、約束したの。妖艶と。あの日、私は妖艶に誓った。今まで妖艶が2人にしてくれたことを今度は…今度は私が!って。
愛翔まなと
妖艶…ッ
私がそう言うと愛芽は悲しそうに顔を伏せ、愛翔は妖艶の名前をつぶやく。
楠若葉くすのきわかば
もちろん、私が妖艶の代わりになれるなんて思ってないし…実際、なれないと思う。妖艶は妖艶で、私は私だ。誰かの代わりになんてなれない。
私は顔を伏せながらそう言う。
楠若葉くすのきわかば
でも!努力することは出来る!いつか2人に認めて貰えるように私頑張るから…!だから…だから…ッ
私が言葉に詰まって声を出せずにいると、愛翔と愛芽が私の手をぎゅ、っと握った。
愛芽あやめ
うん…ッ、うん…ッ!もう…充分伝わったよ…ッ若葉お姉ちゃん…ッ
愛翔まなと
妖艶も…ッッ、妖艶も喜んでいると思う…ッあの時…妖艶が僕たちを抱きしめてくれた時…「僕たちのことだけが心残り」って言っていたんだ…!
2人はそう言って私を抱きしめる。
愛芽あやめ
確かに…妖艶の代わりにはなれないかもしれない。ううん、ならなくていいの!
愛翔まなと
若葉お姉ちゃんは若葉お姉ちゃんのやり方でいいんだ…!もう僕たちのことを愛してくれているってことは充分伝わってるよ…!
楠若葉くすのきわかば
愛芽…愛翔…ッ
そして私もぎゅ、と2人を抱きしめる。
楠若葉くすのきわかば
うん…私、絶対に2人を守るから…!
愛芽あやめ
うん…ッ!
愛翔まなと
あぁ…!
愛芽/愛翔
よろしくね、若葉お姉ちゃん!
楠若葉くすのきわかば
うん!よろしくね、愛芽、愛翔!
そして私たちは微笑みあった。

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