第23話

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2020/12/06 08:16
『人殺し…なんだよね,私』

「…」

『子供の頃からずっと,誰がから殺人術を教え込まれて…何人殺したんだろ…』

「…二十は殺した?」

『ううん,もっと。君が計り知れないくらい』

「…」

『何回自殺を図っただろう…。君の其の本』

「?…」



先生は僕が持っていた,完全自殺読本と云う本を指さした。



『私も持ってた。』

「本当…?」

『何回も読んでね…。もう何が何処に書いてあるのか記憶するくらいに。』

「…」

『君は,死にたいんでしょ?』

「…自殺方法が知りたい。楽で安全な自殺方法」

『…其れなら,良い方法が有るよ』

「本当?」



其れから僕と先生は,自殺方法の話ばかりをした。

其れだけで三時間くらい。



「ふわぁ…」

『寝る?』

「…うん」

『こんな処で寝ないの。寝台ベッド行きな?』

「……嫌。先生の処で寝たい」

『じゃあ私も行くから__』

「嫌‼︎」

『!』

「………嫌,なの」

『…』

「此処に居たい。」



僕は先生に抱き付いた。

離れたくなかった。





『……判った。』

「…」



先生は,御酒を片手に僕の頭を撫でながら

唄を歌った。




『…"海で絵を描く,猫背で見つめる"』

「…?」

『"鴎が飛んで,貝殻転がる"』

「…」

『"ひたすら描いた水の模様,ひたすら描くんだ雲の陰"』

「…」

『"描き終わるとハッとしたんです,其れ迄気付かなかったのです"』

「…」

『"自分はお道化が好きだから,人を全く描かなかった"』

「……何の唄?」

『…さぁ,判らない。何で覚えていたのかも判らない』

「…僕みたいな唄」

『そう?』

「うん。」

『…………御休み,坊や』












『御早う御座います』



「御早う,あなたちゃん」

「御早う」

『はい,御早う御座います』

「太宰君は?」

『……ほら,挨拶は?』



「…」



太宰君はあなたちゃんの後ろから顔を覗かせていた。



「おや,御早う,太宰君。」

「…」

『うん。』

「…森先生…福沢先生…」

「何だ?」

「…此れ。」



太宰君が渡してきたのは,花だった。



「花?」

「何時も,僕等の事面倒見てくれて有難う。」

「え…」



「「「有難うー!先生達ー‼︎」」



後ろから保育園の子達が出てきた。



『子供達からの,サプライズだそうです。』

「みんなぁ…!」

「…ふむ」

「何時も有難う御座います!」

「「「有難う御座いまぁす!」」」

「どう致しまして‼︎」

「…申し分無い。」




保育園は今日も平和です。













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