『人殺し…なんだよね,私』
「…」
『子供の頃からずっと,誰がから殺人術を教え込まれて…何人殺したんだろ…』
「…二十は殺した?」
『ううん,もっと。君が計り知れないくらい』
「…」
『何回自殺を図っただろう…。君の其の本』
「?…」
先生は僕が持っていた,完全自殺読本と云う本を指さした。
『私も持ってた。』
「本当…?」
『何回も読んでね…。もう何が何処に書いてあるのか記憶するくらいに。』
「…」
『君は,死にたいんでしょ?』
「…自殺方法が知りたい。楽で安全な自殺方法」
『…其れなら,良い方法が有るよ』
「本当?」
其れから僕と先生は,自殺方法の話ばかりをした。
其れだけで三時間くらい。
「ふわぁ…」
『寝る?』
「…うん」
『こんな処で寝ないの。寝台行きな?』
「……嫌。先生の処で寝たい」
『じゃあ私も行くから__』
「嫌‼︎」
『!』
「………嫌,なの」
『…』
「此処に居たい。」
僕は先生に抱き付いた。
離れたくなかった。
『……判った。』
「…」
先生は,御酒を片手に僕の頭を撫でながら
唄を歌った。
『…"海で絵を描く,猫背で見つめる"』
「…?」
『"鴎が飛んで,貝殻転がる"』
「…」
『"ひたすら描いた水の模様,ひたすら描くんだ雲の陰"』
「…」
『"描き終わるとハッとしたんです,其れ迄気付かなかったのです"』
「…」
『"自分はお道化が好きだから,人を全く描かなかった"』
「……何の唄?」
『…さぁ,判らない。何で覚えていたのかも判らない』
「…僕みたいな唄」
『そう?』
「うん。」
『…………御休み,坊や』
・
・
・
『御早う御座います』
「御早う,あなたちゃん」
「御早う」
『はい,御早う御座います』
「太宰君は?」
『……ほら,挨拶は?』
「…」
太宰君はあなたちゃんの後ろから顔を覗かせていた。
「おや,御早う,太宰君。」
「…」
『うん。』
「…森先生…福沢先生…」
「何だ?」
「…此れ。」
太宰君が渡してきたのは,花だった。
「花?」
「何時も,僕等の事面倒見てくれて有難う。」
「え…」
「「「有難うー!先生達ー‼︎」」
後ろから保育園の子達が出てきた。
『子供達からの,サプライズだそうです。』
「みんなぁ…!」
「…ふむ」
「何時も有難う御座います!」
「「「有難う御座いまぁす!」」」
「どう致しまして‼︎」
「…申し分無い。」
保育園は今日も平和です。
このは🌱 さん,リクエストありがとうございました!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。