『え……。』
突然告げられた,最愛の人の死。
「本当なんだ。」
『……真逆。冗談ですよね,太宰さん?』
「厭,冗談なんかじゃない」
『そ…んな…』
「一覧の事件,知ってるかい?駐車場に停めてあった車が爆発したと云う」
『……』
「あなたさん?」
『…あ…は,い…』
「…其の車に乗っていたのは,織田作が良く世話をしていた孤児の子達だった」
『…サクラ…達…?』
「君が手に持っている其の袋……君は其の家に行こうとしていたんだね?」
『はい…久々に会うので…其処で待ち合わせをしていた…はず…』
「君も其処に行っていたら,君も死んでいた」
『そ…んな…』
「御免…止めれなかった。」
『……』
あなたさん…
私が誤っても,意味無いよね…。
『………そうですか』
「!」
『判りました。態々云いに来て下さったんですね,有難う御座いました』
「…」
『私はもう行きます。さようなら』
彼女は去ろうとした。
「………流石,織田作の彼女さんだ」
『っ…』
「心強い人だ。」
『…』
「そして織田作と同様…」
『…っ』
「____嘘が下手だ。」
そう云った瞬間,彼女は蹲み込んだ。
「あなたさん…⁉︎」
『…あ…御免なさい…一寸…』
「…」
『もう,大…丈夫…ですから』
「そんな訳無いでしょう?愛する人を突然失った。大丈夫な筈が無い。」
『っ…』
「大丈夫です。私の前では泣いても構いません,織田作もきっと,そう云ってくれています」
『っ…うっ…うわぁぁぁぁ‼︎‼︎』
「…。」
織田作…
君は彼の時,彼女の事を考えなかったのかい?
「………落ち着きましたか?」
『はッ…い…有難う…御座います』
「織田作は最後,貴女に此れを渡して欲しいと云ってきました」
『…箱…?』
「どうぞ。」
中を開けると…
『…っ…』
「!…」
二つ並べられた,銀色に光る
結婚指輪だった。
「…織田作もかなり酔う時も有りました。其の時は貴女の話ばっかりしてました。」
『…ッ…』
「"あなたは本当に可愛い奴なんだ","彼奴の作る伽喱は物凄く美味いんだ"って」
『…ヒック…』
「貴女の事を,本当に愛していたんだと思います」
『……莫迦だなぁ…織田さん…』
「え?」
『私,思うんです…。きっと…今日…云うつもりだったんだろうな…って…』
「…」
『………置いて行っちゃ…駄目じゃ無いですか…』
「…あなたさん…」
『…グスッ…はぁ…太宰さん,目の包帯取ったんですか…?』
「嗚呼…正確には,"取って貰った"ですがね」
『え…?』
「織田作に,最後に云われました。"人を救う側になれ"と。」
『……なら,太宰さんは…』
「はい。此処だけの秘密ですが,ポートマフィアを抜けようと思います」
『…御手伝い出来る事,有りますか?』
「そんな事したら,貴女にまで被害が出るじゃないですか」
『でも,織田さんが最後に"願った"事です。私も叶えたい』
「……なら,あなたさん。一つ御願いが有ります」
『何ですか…?』
「此れから私は,ポートマフィアを抜けてから職に着くまでかなりの時間が有る。其の時は必ず織田作の命日に御詣りに行ってあげて下さい」
『判りました。』
「其れから…」
「何年になっても良いです。織田作の命日に,一緒に墓詣りに行きましょう」
『はい,判りました。』
「有難う。」
『…………其れでは,太宰さん。御元気で。』
「其方こそ,御元気で。」
・
・
・
「そう云えば太宰さん,此処の処,心中しに行きませんね」
「嗚呼。"此の時期"だからな」
「此の時期…とは?」
「此の時期は太宰は心中しない。"有る人"を待っているんだ」
「え?」
「…。」
太宰さんは応接間のソファーで横たわっていた。
誰を待っていると云うのか…。
なんなら自分から行けば良いのに…
カラン…コロン…。
『御免下さい。』
「はーい,御依頼ですか?」
誰か御客が来たみたいで,賢治君が出る。
『いえ,"太宰治"と云う方は居られますか?』
「はい,居ますよ」
「ふわぁー…」
「太宰さーん」
「はーい…」
「太宰さんに,御客様ですよー」
「私に?」
『御早う御座います。』
「…。」
『クスッ』
「え,あなたさん…?」
『はい,そうですよ』
「えぇぇぇぇ⁉︎今年来たんですか⁉︎」
『はい!』
「厭まぁ,何時でも良いと云ったのは私だけど…真逆今日来るとは…」
『やっと心に落ち着きが出て来たんです。今年こそは来ようと思っていました。』
「どうして此処が?」
『青の使徒?の新聞で武装探偵社の方が写っていて,其の横に写っている方が太宰さんなのでは無いかと思ったんです』
「流石,織田作の彼女…観察力が人一倍だ」
「あのー,太宰さん?」
「其方の女性は貴様の客か?」
「そうだよ」
「御早う御座います。太宰さんの下っ端の中島敦です!」
『"織田"あなたです』
「!」
「宜しくお願いしますね!」
『はい!』
「此れからどう致しますか?」
『御墓詣りに行こうと思っています』
「御墓詣りですか?」
『はい,太宰さんと』
「……そう云う訳だから,行ってくるねー!」
「一寸,太宰さん⁉︎」
「止めとけ,敦」
「え?」
「行かせてやれ。」
「?」
・
・
・
「苗字,織田で大丈夫だったんですか?」
『実は,結婚指輪の箱の底に小さく折られた婚姻届が入っていましてね。ポートマフィアの構成員として登録されている中,戸籍上は亡くなった事はまだ記録されていなかったんです。』
「成る程。だから婚姻届が出せたんですか」
『はい。名前も住所も…証言人まで書き終わっていて。一寸笑ってしまいました』
「ふふっ,織田作らしいですね。」
『本当に。』
私達は織田作の墓に着いた。
「……久しぶりだね,織田作」
『本当に久々でしょうから,好きなだけ話してあげて下さい』
「有難う。」
「…織田作,御免ね。実は私…まだ君が最後に云った言葉を,彼女に伝えられていないんだ」
"…"
「こうして会いに来てくれた今,如何やって彼女に話そうか迷ってる」
"…"
「此れを聞いて…彼女は如何思うだろう…。悲しむかな…」
"………そんな事無い。"
「!」
"なんせ,俺が"愛してる"女だからな"
「………………そうだね。」
"また何か会った時は,あなたを助けてやってくれ"
「うん,任せて」
"あなたを,宜しくな。来年も待ってる"
「………私は彼女を好きになる事は出来ない。其の気は尚更無いさ。でも,良き友人として此れからも接していこうと思ってる。任せてよ,織田作。」
『あら,終わりましたか?』
「うん。今度は,あなたさんの番だ」
『はい』
『織田さん,御元気ですか?』
"嗚呼,元気だよ。サクラやシンジ達も"
『其れは良かったです。私も貴方と同じ様に,今は孤児の子達を助ける仕事をしています』
"其の子達は如何だ?"
『皆,辛い子達ですが…優しい心を持っています』
"そうか。良かったな"
『はい。』
"………あなた"
『はい?』
"置いて逝って…御免な…。"
『…謝らないで下さいよ…悲しく…なっちゃうじゃ,ないですか』
"そうだな,御免な"
『…織田さん,大好きです』
"嗚呼,知ってる。"
『織田さん__』
"作之助。"
『え?』
"作之助って,呼んでくれ"
『…作之助さん』
"何だ?"
『愛してます。』
"嗚呼。__
________俺も。愛してる。"
ヤバイ。
書いてる途中から涙が止まらなくなった…。
はぁい‼︎文スト,織田作之助です!
もうあの,はい。
文ストの中で織田作之助のシーンは何回見ても泣いてる。
あれ見て泣かない人います⁉︎
います⁉︎⁉︎ ←二回聞いた。
書いてる途中に気付いたんですけど
二回連続で諏訪部順一さんでしたね笑
まぁ全然大丈夫ですが!
ウェルカムですが‼︎
織田作は,絶対に
絶っっっっっっっっっ対に
顔に出ないタイプよね。
絶対に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。