第5話

銀魂×沖田総悟
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2020/08/06 03:13
「隊長,組長がお呼びです!」





「近藤さん,何ですか?」

「おう,総悟!実はお前に,助手を付けようと思ってな!」

「助手,でやんすか?」

「お前はかなりのドSだが,彼女なら耐えれるだろ!」

「はぁ…」

「良いぞ,入れ」



ガタッ



『失礼致しんす』



第一印象,通常。

おそらくこの真選組の中で,1番普通の人間だと思う。

口調以外は。



『月谷あなたと申しんす。』

「彼女は,何週間か前に真選組に来てな。"沖田総悟と言う男はいるか"と言って,客人かと思っていたんだが…

『真選組に入る事が所望で御座りんす。沖田総悟に借りを返しとう御座んす』

と言って,土方に見てもらったんだが,物凄い実力でな。もしかしたらお前を超える実力かも知れん。」

「ほぉ。」

『あちきは,以前沖田ミツバ様に御恩がありんす。』

「!」

『以前あちきは,花魁で御座いました。子供の頃,米が腹一杯食えると聞かされ,訳も分からず花魁街に連れて来られ,何年も働いた時期が御座んした…。けんど,そんなあちきを助けて頂きんしたのが,沖田ミツバ様で御座りんす』

「…。」

『何の身寄りもないあちきを拾ってくださんしてなぁ…それはもう,良くして頂きんした。けんど,先日ミツバ様が御亡くなりになられたと御聞きしんした…何度か,弟様の御話をして頂きんしてなぁ…良く笑って居られんした。』

「…姉上…」

『拾って頂いたミツバ様に御礼がしたく,弟様が真選組に居られると御聞きし,貴方様に恩返しがしとう御座ります』

「…。」

『どうか,あちきを使っておくんなし。』




姉上がそれを思って下さるのなら…



「分かりやした。」

『…。』

「姉上も一度だけ,あんたの話をしてやした。"話の分かる,娘の様な可愛い子"だと」

『…ッ』


姉上の話をし出すと,声を出さずに目に涙を溜め出した。

本当に自分を拾ってくれた姉上が大好きだったんだと,伝わった。


「…あんたも,姉上は大切な人だと?」

『…ッ,はいッ…』

「…辛かったんで?」

『…ヒグ…』コクッ

「そうでやんすか…」

『すみません…泣くはずなんぞ…』

「いや,構いません」


俺は,彼女を受け入れる事にした。

幾らなんでも,助けてくれた人間の肉親の前で

泣くなんて事する人間はいないだろう。

でも,彼女は俺の目の前で泣いた。

優しい心が有るから。



「あなたさんと言いやしたね?」

『はい』

「助手,引き受けます。」

『ありがとう御座りんす…』











『はぁ…』


この花魁街に来てから10年くらい経つのか…。

17歳…長いなぁ…。

最初に相手をした男は,真選組の男だった。

自分の先輩に連れて来られ,仕方なく来たと言う話で,かなり酔っており

私の部屋の予約を受けると,すぐさま着物を脱がされた。

それからは1人として男の相手をした事がなく,今にもここから抜け出したかった。

でも花魁は,花魁街から出ると,速攻死刑が下される。

花魁街は女郎達の監獄。

出る事は出来ない。

方法は1つある。

店の客である人間が自分の事を気に入り,高額な金で買い取れば,花魁街から出る事が出来る。

でも,その者の使いになる事には変わりはない。



『なんで…こんな所にいるんだろ…なんで,生きてんだろ…』


そう言葉を発した瞬間に,私の歯車は動き出した。


「それは,何もしていないからでは?」

『!』


敷居の横で,私を見つめる1人の女性がいた。

綺麗な人で,優しく声をかけた。


『何もしていない…でありんすか?』

「ずっとこの様な中で過ごして…その様な姿のまま死んでいく人生を送りたいの?」

『そんな事は…』


あるはずがない。

そう言いたかった

でも,言えなかった。

何故なら,そうするしか私の人生は無いと,心無しに思っていたから。



「…貴方,お名前は?」

『…月谷と申しんす。ここではそう呼ばれておりんす』

「私は貴方を買うわ。」

『…え?』

「貴方はこんな所で人生を終わらせるべき人じゃ無いわ。私が買って,貴方を自由にする。」

『けんど…かなりの金額で…』

「そうかしら?」



そう言うと,店の中へ入っていき

店主と交渉して,私を買った。

これが私がミツバ様で出会った瞬間。



「そんな事があったんでェ…」

『はい』



「失礼します」



「お着替えをお待ちしました」

『あらあら,ご親切にありがとう御座りんす』

「は,はい…」


「はっは。落ちるな!」

「ですね。」

『はい?』


渡されたのは,真選組の隊服だった。


「それを着て,俺の部屋に来てくんだせ。待っとりますで」

『かしこまりんした』




私用の隊服は,他の人のとは変わらずだった。

その方がありがたい。

洋袴の方が動きやすい。

私はすぐさま着替えを終わらせて総悟様の部屋へ向かった。










『失礼致しんす』


襖を開けて,お辞儀する。

花魁街にいた時からの癖。


『着替えが終わりんした。近藤様からの御命令で今日の任務をご一緒に_』


ギュ。


『⁉︎』

「"やっと,出会えた"。」


やっと,出会えた…とは?


『何を,しておいでで…?』

「実は俺は,あんたがこの真選組に来る前からあんたの事,知ってるんです。」

『あちきを…?』

「何年か前に,あんたのいた花魁街に行った事があるんでやす。土方さんの付き合いで。水だと言われて飲んだ物が酒で,間違えて酔ってしまい,便所に行こうとした時,ある花魁がおりやした。」

『…』

「後ろ姿だけでも,綺麗な人でやしてね,すぐさま顔は,体は,心はどんななのか知りたくて,予約を入れて一夜を過ごした花魁がおりやした。」

『…そのお方の名は?』

「"月谷"と言いやした」

『お間違えでは無くて?』

「確かに月谷ですねェ。間違いはありやせん」

『…さいで,ありんすか…』

「期待外れは一切無く,綺麗な女性でした。それから会った事はなかったでやす。会ったら…離れられなくなってしまいそうで…」

『もう一度,会えたんですね』

「…一目惚れってやつですかね。頭から離れなかった。もう一度,そして何の不自由も無い状態の貴女に会えて俺は幸せでやすよ」

『それは,何より…。あちきもそうかも知れんせんなぁ』

「何がで…?」

『あちきも,貴方様の事が忘れられる事はありませんでしたねぇ…。御慕えしておりんしたのかと。』

「なら,あなたさんよォ」

『はい』




「俺と一緒に,人生歩いてくれやせんか?」














沖田総悟,でした。

作品的に江戸時代がテーマなので,口調を花魁のようにしてみました。

沖田ねぇ…いいよなぁ…。

ドSは度が過ぎるけど。

でも惚れる。うん。

CVは…あ,鈴村さんか!

鈴村さんってかっこかわいいんだよなぁ。

総悟も抜擢だし!

総悟は,そーだな…。

ベッドの上では,ドSは出さなさそう。

Sでセーフなくらい。"ド"は付かないくらい。

徐々にエスカレートして行くタイプかな…。

いいなぁ。




分からない言語あったかも知れないんで,一応説明を。

・花魁(おいらん)→遊女って言ったら分かるかな…夜に男と遊ぶ為の女性のことです。

・花魁街(おいらんがい)→花魁が集まる屋敷ですね。華やかな感じで,主に吉原とかが歴史にはあります。

・あちき→私。

・女郎(じょろう)→花魁達が「私達」などの言葉を使う時に,言う言葉です。

・御慕え(おしたえ)→好き。



結果好きなんですよね。花魁道中口調って。

カッコいい。



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