第93話
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本人視点に戻ります
頭がふらつく。
音が遠い。
痛い。
眠い。
もうすぐ、死んでしまうのだろうか。
でも。
ガァンッ!!!と妓夫太郎の頚を狙ったのに鎌で防がれた。
羽返そうとする妓夫太郎に力で対抗する。
私はお姉ちゃん程の才能も筋力だってない。
宇髄さんより力もない。
だけど、少しでも役に立てるのであるならばこの力を使おう。
ぐんっと押し込んでわざと力を抜き軽く跳ね飛ばされる。
羽織の裾がきらりと光るのが目に入った。
同時に胸元のお守りが少し暖かい気がした。
まるで無一郎くんに
「大丈夫だよ」
って言われているかのよう。
心が暖かくなった。
だから。
ギュル、と血鎌が私と炭治郎に向かってくる。
私の分しか防げない。
煉獄さんならばみんなの分も防げたのだろうか?
防げなかった血鎌が炭治郎に襲いかかろうとした時。
宇髄さんが妓夫太郎の攻撃を捌き、炭治郎を守った。
譜面、宇髄さん独自の戦い方なのだろう。
私には分からないけれど、今できる最善のことを。
宇髄さんと私で妓夫太郎の攻撃を弾き、首を狙う。
私はまだ腕も足も動く。
けど宇髄さんは左の腕の骨を折ってる。
それに顔色もさっきより悪い。
ザシュッ!!
ザクッ
鳩尾を、血鎌で貫かれた。
好機だ。
全身の筋肉に力を入れ、ぐらつく頭を叩き起して奴の腕を握る。
私と宇髄さんの後ろから飛んだ炭治郎が妓夫太郎の頚を捕える。
きっと堕姫は拓海達がやってくれる。
だから私はせめてこいつを。
ザシュッ、という音と共に妓夫太郎の頚が飛んだ。
身体の方の力が抜け、鎌が抜けた。
ペタン、と力が抜けた。
しかし。
目の前の妓夫太郎の身体から流れていた血が動いた。
宇髄さんは皆に向かって
私は最後の力を振り絞って宇髄さんも、炭治郎も担ぎあげてその場から退避した。
もう、ダメだ。
力がもう持たない。
意識が保てない。けどまだ倒れる訳には行かない。
真後ろで感じた爆風と痛み。
炭治郎も宇髄さんもあれ以上の傷は負ってない。
良かった。
少し離れたガレキの上に2人を下ろした。
くるりと振り返ってフラつくが鬼の頚を探しにその場から離れた。
克哉が泣きそうな顔で私を引き止めた。
そこで拓海もやってきた。
そんなに酷い怪我だろうか?
そう思った時には、視界が傾いていった。
遠くで
その声を最後に、意識は遠のいた。