〈玲於side〉
あれから仕事を終わらせて
俺らがいつも行く居酒屋に向かう
向かってて
前を歩く涼太くんとあなたさん見てたら
小声で言ってくる隼
なんて見え見えの嘘
よりによって涼太くんだもんな……
って呟いてる隼は無視して
また前の二人に目線を移すと
二人の周りにはオーラが漂ってて
誰も近付くな。
って言われてる気がした
涼太くんには敵わない。
なんてそんなの分かってて
自分の気持ちも素直に言えねぇ俺が
あのキャラの涼太くんに勝てるわけがない
龍友くんが質問したその答えが
俺にすごいダメージを与えた
涼太くんの家……??
二人で……??
二人の笑顔を見れば見るほど
俺の心は黒く染まっていって
……俺今日無理だわ
ってふと思った
そう言って
皆の輪から抜けて家に戻る
面倒くせぇ。
タクシー使お。
タクシー止めて乗ろうとしたら
後ろから急に腕を掴まれる
連絡先なんて、明日も会うんだから
明日すれば良いのに。
俺のことなんかほっといて
皆と飲めば良いのに。
俺の目の前のあなたさんは
息が上がってて、走ってきたんだ。って
…なんでいつもそうやって
俺に期待させんの、、、?
そんな会話しながら交換して
そう言ったあなたさんは走って店に戻ろうとする
どうやら1人で走ってきたらしく
なんで皆付いてこねぇの、?
さらわれたらどうすんの、?
なんて
ほら。
って半強制的に乗せて
店に向かう
めっちゃ遠いってわけじゃないけど、
女の人が簡単に走れる距離ではないわけで。
この距離走ってきたんだ。
って思ったら自然と頬が緩む
そう思ってたら店に着いて
そう言って最後まで笑顔を振りまいて
お店の中に入っていくあなたさん
”また今度、ご飯食べ行こ!!”
って……
何その言葉。
二人で、?
涼太くんには内緒、?
あぁもうまじで……
1人で静かに嘆いてたら
そう言って動き出すタクシー
なんて、もう皮肉しか言えなくなってきてる俺
そんなこと話してたらすぐに着いて
もうすっかり仲良くなった運転手のおじちゃん
お店までの分は良いから。
なんて言ってくれて
頑張ってください。
ってその一言で強くなれた気がして。
もしかしたらこのおじちゃん
俺の恋のキューピッドだったりする?
とかしょうもないこと考えて
家に着いてからは
テレビ見たり。
用事なんてないけど
言ったからには今更戻れもしない
なんて思うけど、
二人の笑顔を思い出す度に心が黒くなって
って一人で呟いてた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。