夏だというのに冷たい風が頬を掠め少し体が震える
その瞬間肩に何かがフワリと掛かる。
肩に触れたのはイザナの服だった。
丁寧に返してみれば、再度肩に掛けられる
そう言って歩き始めるとイザナも静かに付いてくる
身長差もあり、歩幅が全く違うのにわざわざ合わせてくれる
小さな気遣いを簡単にこなせてしまう男だ。
隣を歩く彼の横顔を盗み見る様にチラリと目をやれば
視線にすぐ気付いたのかバチッと目が合う。
ドクンッと跳ねた心臓を落ち着かせるように
平常心を保つ
なんで私、目が合っただけで緊張してんだろ?
私らしくないな〜。なんて考えていたら
あっという間に近所まで来ていた。
順調に進めていた足を止め、立ち止まる
そうだ…、コイツ私の家知ってるんだった。
手を引かれ一歩、また一歩と近付く
そして、目の前には明かり一つない家が。
イザナの隣を離れ、扉のドアノブに手を掛ける
そう言って家の中へ入ろうとすると
誰にも知られたくはない
誰にも踏み入れてほしくない
ワ タ シ だ け の 秘 密
_______イザナside
『家族いねぇの?』
この言葉に対して彼女は何を思ったのだろう
空の様な澄んだ綺麗な瞳はまるで曇り空の如く
荒んだ瞳へ早変わり
彼女の口からはたった一言
それだけ言って家の中へ入っていってしまった
お前が入っていった家を見つめただただ思う
▷▶︎▷▶︎空桜🦢🌿