【ヨルノカタスミ】.kobore
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石橋side
なんとなく、夜更かししてる間は片隅にいる気分になる___。
夜中。呑めもしない酒を手に持ち、今日も君を思い出す。東京の街に向かって呟く
「あなたに会いたいな、」と。
あなたがやりたいと言っていた仕事が大阪を本拠地にしてる仕事だった。俺たちは、遠距離恋愛なんてできる余裕もなくて、別れを切り出した。
有難いことに大阪での仕事も少し増えた。東京の芸人が大阪の仕事で爪痕を残すのはだいぶ大変。相方も、もちろん俺も緊張しながら新大阪駅着の新幹線に乗った。
新幹線を降りて、大阪の街を堪能していた時、見覚えのある、愛しい顔が目の前にあった。
「あなた…!」
俺は名前を呼び走ってお目当ての人に駆け寄った。
『…遼大…久しぶり…』
あなたは目を見開いて驚いた様子で俺に小さく手を振った。
「久しぶり…急に声掛けてごめん。」
『ううん、会えて嬉しい…だから謝らないで』
君は昔とは違っていた。胸元まであった髪をショートカット切っていたし、そんなによく笑う子だっけ?という違和感もあった。
笑った顔が一層綺麗だった。
あなたとずっと笑っていたいという願いが叶うわけでもなく、タイムリミットがせまった。
あなたと、またね。と言葉交し、テレビ局へ向かった。
大阪のホテルに泊まることになった。夜になってもまだ喋ったという感覚の熱は残っていた。
吸えもしない煙草を加えて月を眺めていた。
明日の仕事はたしか無かったはず。
「君に会わなくちゃ、」
ホテルをでて、君の携帯に電話する。
1コール目でかかった電話に向かって愛を叫んだ。
「俺!やっぱりあなたじゃないと無理だわ!家、行っていい?」
少しの間があった。
『私も同じこと考えてた。マップ、送るね。』
と切ったすぐ、あなたの家らしきマップが送られてきた。
電車に揺られ、君の家に行く。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!