ジョルノside
先程のあなたさんの様子のことで僕達はリビングで話をしていた。正直僕としては話したくなかったのだが。
だが、ジョセフはなんとなくその辺り分かっているからか話す直前に一回僕の方を見た。なので僕はありがたいと思いながら首を横に振った。「話さないでください」と言う意味を込めて。
すると、ジョセフはそんな僕を見て頷いたかと思うと「まああなたのちょっとしたミスって言うか、ね?」と話し出した。僕は思わず冷や汗をかいた。
話が違うじゃないかと焦って咄嗟にジョセフの口を手で塞いで睨む。するとジョセフは「え~」とでも言いたげな顔をしたがそんなのはどうでもいい、兎に角話さないで欲しいのだ。
何でそう思うのか、と言われたらそれは僕にも説明し難い。何せこの気持ち自体今まで感じたことのない気持ちだからだ。
「あのあなたさんの姿を知るのは自分だけで良い」と言う変な気持ち。「あなたさんが見せてくれたウインクもどきを知っているのは自分とジョセフだけだ」と言う不思議な優越感。
それが僕の心を完全に支配していたのだ。何でこんな気持ちになるのだろうか、本当に今までこんな気持ちになることはなかったのに。不思議過ぎる。
取り敢えずジョセフには「良いですか?先程のことは僕達3人の秘密ですからね?」と釘を刺しておいた。完全には信用出来ないが((
「余計なことを話さないと良いんですけど」と思いながらキッチンの方に向かうと、まだ入ったわけでもないのに良い匂いがする。丁度肉じゃがを煮込んでいるのだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!