Day1.
PM:)21:26
今日、私は一目惚れをしました。
ずっと恋していなかった私に新たな出会い。
あの人が、スキ。
ーーーーーー
数時間前_
私は長くなった前髪を揺らしながら、美容院にやってきた。
私は、2ヶ月の頻度で髪を切ってる。
前回からちょうど2ヶ月経った今日。
散髪しに、美容院にやって来た。
お店は前回と違い、私1人。
カウンターのお姉さんに声をかける。
いつも美容室に来て、1番に見る顔だ。
するとお姉さんは、私の顔を見るとにこりと微笑み、なにかの資料をめくった。
私は言われた通り、椅子に座って待つ。
私しかお客がいない美容室は、和やかなBGMのおかげか、優しい雰囲気を放っていた。
まぁ、都合上予約ができなくてこんな時間ってことでお客さんがいないっていうのもあるけど…。
そんなことを思いながらスマホを取り出して、ゲームでもしようかなと思っていたら…
私を覆う黒い影が、
視界が暗くなったことにより、私は前の人に気づき、上を向く。
思わず言葉を失った。
なんかの髪を見ながら、そう言うこぼさん。
イケメン…
胸の高鳴りをそのままに、私はこぼさんについて行った。
こぼさんが、慣れた手つきで"クルっ"と椅子の向きをかえる。
私は、用意された椅子に座る。
特に要望のなかった私は、初めて"おまかせ"という選択に出てみる。
こぼさんは、頬を優しく緩めた。
最初にシャンプーをし、カットにうつる。
いきなり馴れ馴れしくて、ドキッとする。
こぼさんが、鏡ごしに私を見て目が合う。
こぼさんの口からいきなり関西弁が出てくる。
そう言われれば、イントネーションが少し違うような気がする。
私は、ニコッと笑う。
だから、見ない顔だと思ったわけだ。
こぼさんは、太陽のような眩しい笑顔を、私におくった。
1番目は…
誰なんだろう?
友達?
彼女?
止まらない疑問。
そういうこぼさんの声に、はっとする。
変な顔をしてたと想像すると、恥ずかしくて赤面。
ぐいっとこぼさんの綺麗な顔が迫ってくる。
こぼさんはふっと笑って私から顔を離した。
気持ちがバレないように、私はわざと明るく言った。
横から男の人が、入ってくきて手際よくドライヤーをセットする。
たくま…さんかぁ。
この人も、この前までいなかったな…
なんでこんな美形が、こんな田舎に集まったの…?!
奇跡かぁ!?
私は、必死すぎて大きく首を振りながらそう言った。
気さくに話しかけてくれる、たくまさんに胸がパチンと弾ける。
そんな他愛のない会話を楽しんだ。
こぼさんが、私の顔をのぞき込むからバチッと目が合う。
私が答えを出すまもなく、こぼさんが準備を始める。
数分後_
髪なんて、まともに巻いたことなかったから、すごく新鮮な気分が私の心を包む。
たくまさんのストレートな言葉に胸を撃たれる。
そう言ったこぼさんが、ニコッと笑いながら、私の髪に鏡をあてる。
髪型を切るだけで、こんなにドキドキしたことはなかった。
素っ気ないけど、優しい言葉。
そんなたくまさんが、可愛い。
ーーーーーー
私は、美容院の前でこぼさんとたくまさんにペコペコ頭を下げた。
冗談混じりで、クスッと笑うこぼさん。
真面目にそう言われると、恥ずかしいんだけど…
礼儀正しくペコッと深いお辞儀をするたくまさん。
私は、ペコペコとお辞儀を繰り返す。
ーーーーーー
そんなこんなで私、あなたは…
一目惚れしてしまいました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!