私は家電量販店の携帯コーナーで勤務している。
今日は土曜日ということもあって私が出勤した頃にはもう沢山お客さんがいた。
携帯コーナーから見えるカメラコーナーには、双眼鏡が大きく展示されていた。
地元でコンサートがあるとそのアーティストのライブDVDを流して双眼鏡の販促をしている。
今日はもちろんNEWSのライブ映像だ。
私は横目でライブ映像を見ながら予約や在庫の確認をした。
すると……
うわっ…!
突然背後からでっかい声で挨拶してきたのは同期の増子くん。
馴れ馴れしく名前で呼んでいるが、私はこの増子くんがあまり得意では無い。
というのも、、
〜〜〜新人研修〜〜〜
同期の中でも一際元気よく挨拶した彼は私の自担の愛称で呼んでと大きい声で堂々と言い放ったのだ。
……
…
まぁ、名前が増子さんなんだもんね。
渡辺さんのナベ呼びとか、松田さん松本さんのまっちゃん呼びとかそういうのだよね。
少し引いてしまったがみんなと仲良くなりたいんだろうなとその時はあまり深く考えなかった。
私は体育会系なタイプでは無いので真逆だなぁ、と思い仲良くなれないだろうなと勝手に壁を作っていた。
けどそんな思いも儚く散り、見事同じ店舗に配属されてしまった。
強要されてはますます引いてしまい、絶対にまっすーと呼ぶもんかと心に強く誓ったのだった。
〜〜〜回想終わり〜〜〜
それからほぼ毎日まっすーって呼んでって言われたり暇さえあればしつこく絡んできたりで大変だった。
そんなこともあって私はずっと塩対応を決め込んでいる。
私は職場ではNEWSのファンということを隠している。
それに増子くんに話したらうるさそうだからね。
それから何か言っていたようだったけど、私はすぐその場を離れて自分の持ち場に向かった。
今は仕事だ!終わったらまた昨日みたいにお酒飲みながらライブ観よう!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!