第23話

TIME
72
2018/10/02 02:55
私が起きた時には

とっくに体育祭は終わっていた。


誰かに右手を握られた。

誰だろう。そう思った時,左手も。

温かい。幸せ。

私,このまま逝っちゃうのかな。

まぁ,人生ってこんなもんなんでしょ

初恋なんて叶うはずない。

私には夢なんて。持つ資格もなかったんだ。



私の両手は誰かの温かさに満たされていった。



でも,今なら分かる気がする。

こんな人生だから楽しかったなって思える事が,
たくさんあるって事に。




私は必死にその両手に応えた。

(優奈が目をゆっくり開ける)

左には美優。右には駿佑。
奥の椅子に座っているのは,お母さん。


優奈
あ,ありがとう..。
いつ,いつも,そばにいて,くれて。
私は震える声で,その言葉を皆に伝えた。

今までの気持ちを伝えられただろうか。
皆が,泣いている声が聞こえた。

泣いている顔なんて,初めて見るのに。

なんで今なんだし笑

ほんとやめてよねっ。。やめてよ。

私だって,皆と泣きたいよ。

泣いて,泣かしちゃってごめんねって

謝りたいのに。

私の為に泣いてくれて

ありがとうって,まだ言ってないのに。



(ピーーーーーーー)

ドタドタドタドタドタドタ

先生達や看護師が来る。

AEDを使って,私の心臓を..
先生
午前3時26分 ご臨終です。(手を合わせ一礼
お母さんと美優と駿佑は泣いて泣いて泣いた

私は死んで,

改めて命の大切さに気づいた。

こんなに簡単に逝ってしまうんだもん。

信じられないけど,これが私の人生なんだから

私は,16年間,精一杯生きた。

それでいい。

病気になった時のショックさで

母に八つ当たりした時

癌が遺伝する憎しみ

とてつもなく襲った苦しみ

全て辛かった。

でももう終わった。



プリ小説オーディオドラマ