おぞましい夢だった。私が、殺人を犯してしまう夢だ。
ん、待てよ。もし私の母親さえいなくなれば。
いなくなれば。いなくなれば。いなくなれば。
……私は自由になれるのかな。
思い返せばいつもそう。
私の本当の性格を隠すようになったきっかけは、母親だった。
いつも私に主導権を握らせるような発言をしておいて、その決断に評価して自分のいいように
動かすのは母だった。
わたしは物心ついた時からそれをとっぱらうような欲望は芽生えてこなかった。
勝手なことしないでよ!
…そんなことは言えない。この前も、言えなかった。本当は雛子から電話があった時、
そう言って声やテンションを作ってでも母の勝手にはしたくなかった。
でもあれは現実を基にした妄想に過ぎない。本当は、勝手に「いろいろあってね…」
なんて誰でも心配するようなことペラペラ喋るのを指を咥える思いで見ていたた。
うまく意思表現できない。これも全て私が臆病なせいだ。
眠れない、今日も。
私なんかこの暗闇に消えて仕舞えばいいのにね。
苦手な薬を何錠も水を挟んで飲み込み、ボヤつく視界と体の輪郭がいい感じに痺れて気持ちよくなったところで私は深く眠りについた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。