しかし、彼女に異変が起きた。
真莉の様子には今までそのような態度は微塵も感じていなかった。
しかし、ある日の朝、校庭を歩いていても、背後を取って突進し眩しいほどの笑顔で挨拶をするような人間は誰もいなかった。
真莉はああいう性格でありながら真面目なので、遅刻なんかするようなヘタレではない。
授業を全部終えて帰宅した頃、携帯の通知が届く。
なんだ。そういうことか。
調子よくいつも通りおちょくってやった。
しかし、それから既読がつくも、何時間経っても返信がこない。
すると突然、誤魔化すかのように返信が来た。
少しだけ疑いつつも、ホッとしたスタンプを送り会話を終了させた。
長年の勘だが、これは何か隠していると見た。
なんだろう、実は癌だったりして…深く考えすぎか。
まあ、一概に癌といっても、ステージが進んでいなければ、命に別状はないケースもあるだろう。
真莉は普段からウィッグでお洒落することだってあるから、万一抗がん剤で毛を剃っても、ポジティブな方向にしか考えないに違いない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。