教室を追い出された私は、行くあてもなく街中を彷徨っていた。
両親のことや桃子のことをアレコレ考えていると、懐かしい光景が目に飛び込んできた。
ここは幼い頃、桃子と遊んだ公園。
目を細めてると、あの頃の思い出が次から次へと蘇ってくる。
あの頃は本当に楽しかったなぁ…。
ここで日が暮れるまで遊んでたよね。
空まで届きそうなぐらいブランコを漕いで。
その時桃子は、私にこう言ったよね。
そう言って指切りしたっけ。
まだまだ幼かったあの頃の私は、純粋に永遠を信じていたんだ。
これからもずっと、何があっても私達は親友だと。
切っても切っても絶対離れない、友情だって。
微塵にも疑ってなかった…。
でも、そんな信用も長くは続かなくて。
桃子、あなたは私を裏切った。
私達の友情は永遠じゃなかったの?
どうしてあなたまで私を冷たい目で見るの?
今だって私はあなたのことを信じている。
私達の友情は永遠だって…。
こう思っている私って、わがままなのかな?
ウザいと思われてしまうのかな?
どんなに足掻いても答えは見つからなくて。
ただ、次から次へと瞳から涙が出てくるばかりだった…。
誰もいないってわかってるのに、つい声を出してしまう。
私の声に誰でもいいから、応えて欲しかったのかも知れない。
ふと電話機に目を向けると、留守電が何件か入ってるのに気づく。
私はその留守電を一切確認することなく、すべて削除する。
はあ…今日もか。
毎日のように何件もかかってくる無言電話。
留守電も今日に始まったことではない。
最初は恐怖で震えが止まらなかったけど。
今はもう半分諦めている。
玄関に貼られている紙を見ても、動揺しなくなった。
慣れ、って怖いよね。
本当は辛くて傷ついてるはずなのに…強がっちゃって。
こんな私だからいじめられるのかな?
良い子ぶってるって思われるのかな?
もういじめに抵抗するのも疲れたよ…。
私の心は既に悲鳴をあげているけど、それを無視している。
その時虚しい空間に、大音量で電話が鳴る。
出たくない…でも出てしまう私。
お決まりの無言電話。
本当に気持ち悪い…。
少し声を張り上げて言うと、
ガチャン。
そう暴言を吐き、思いっきり電話を切られた。
はは…「死ねよ」かあ…。
出来ることなら私も死にたいよ…。
生きてるのが辛いよ…。
生きてても一人ぼっちなら、死んだ方がマシよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!