第2話

#2
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2020/09/09 13:34
 「○○中学に通ってます、クォン·スニョンです。よろしくお願いします!」

飛び込みで体験教室に参加した俺は、ダンス用の服もなければ、靴も知識も技術も塵ほどもなく、初日は端で見ているだけだった。

受講者は、下は小学生から上は大学生ほどまで、男女問わず本気で表現者になりたい人達が集まっていた。音楽を爆音でかけて踊り狂っている様子を想像していたが(後でそれはクラブだということに気づく)、思ったより静かに、丁寧に講義が進む印象を受けた。

その中で一際、光って見える人物がいた。身長は160cm程で、スタイルのいい黒髪の似合う女性だった。今思い返せば体の凹凸は控えめだった気がするが、群を抜いて妖艶で魅力的な踊りを見せつけられた瞬間だったように思う。

レッスンを開始して、受講生と段々と打ち解けていったが、件の彼女とはどうも1枚壁があるように感じた。

「ぼく、あの人に嫌われてるんですか…?」

ここに来てから親しくなったヌナに恐る恐る尋ねた。

「ん~、難しいわね。私もあの子とあんまし話したことなくてさ。噂だと、我が強いらしくて、下手に話しかけたらメタメタにされるらしいわよ。まぁ、あの子に嫌われてようが知ったこっちゃないんだけど、虐められたりしなきゃ大丈夫よ、きっと。」

結果、あまり気にしなくていいらしい。確かに思い返せば、他の生徒と親しくしている様子も見かけたことは無かったな、と考えながら廊下を歩いていると、肩に軽い衝撃を覚えた。

「あ、すいませ…」

『いいえ、こちらこそごめんね』

くぐもった、それでいて芯のある心地のいい声が廊下に響いた。それが、初めて聞いた彼女の声だった。顔を確認した訳では無いけど、何故か自信があったのだ。

今を逃せば…

手遅れになるなんてことは、馬鹿な俺でも気づいていた。

「学校!!…どこに、通ってますか。」

振り返ると、目を点にさせて棒立ちになっている彼女が居た。あぁ、可憐だ。

「あぁ、いや、入ってからあんまり話したこと無かったし、いくつなのかも知らないし、なんていうか、その…」

『○○高校。1年だよ。中学は多分君と同じだと思う。』

言葉が出ず、暫く目だけが合っている時間が続いた。

『どうしたの。お腹でも痛くなった?』

僕の顔の前で、ブンブンと手を振る彼女。答えてくれたことがあまりに嬉しくて、暫くそこから動けなかった。いや、動かなかったの方が正しいかな。奇妙な行動をする僕を見て、楽しそうに笑う君をいつまでも見ていたかったから。

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