第120話

番外編 : 1人に
2,416
2022/04/28 06:00


『 kuna side 』



_____あなたはね、可愛くて、優しくて。人の痛みがわかる子なのよ。



_____あなたは私たちの大切な娘なの。



_____まったく、無理すんなよー?



_____あなた、お前のやりたいようにやれ。俺と母さんがお前のレールを敷いてやる。



お母さん、お父さん。私一人ぼっちだけどね。



大切な人紫闇も、全部失ったけどね。



私、今が楽しいよ。



ボーダーの仲間のみんなが暖かくて、優しくて。



翡翠や深藍はいつも私と一緒にいてくれて。



みんな、みんな。大好きだよ。



でも、やっぱり心残りは、にのみやさん達とまだ仲直りできてないの。



私まだ話し合えてもないの。ずっと逃げっぱなしで。



「向き合わないとってわかってるんだけどね。お母さん、お父さん。」



「.......そろそろ行くね、お母さん、お父さん。また来月来るよ。」



私の声がよく通る。いつもなら私の声なんて小さいのに、ここにきた時だけは本当に欲の通る。



_____逃げてもいいわ。あなたなら大丈夫よ。



_____今は逃げててもいい、お前はいつか絶対そいつらを必要とするのだから。



後ろを向いて、帰ろうとするとお墓の方から声のようなものが聞こえた気がした。



励ましと、未来予知みたいなもの。ほんとに、お母さんとお父さんにはかなわないよ。



「私、絶対匡貴兄さんと仲直りするね!」



満面の笑みで私をそう答えた。















あなたちゃんの未来が綺麗だ。



あなたちゃんの未来が、笑顔に満ち溢れている。



この先悲しいことも苦しいこともいっぱいあると思う。



それでも、あなたちゃんのもっと先の奥の未来は笑顔で満ち溢れている。



そこには二宮さんも居て。やっぱりあなたちゃんには二宮さんが必要なんじゃないか、と少しだけ笑いそうになった。



それと同時に、心から溢れ出てくる喜びと、後悔。



俺はいつか、あなたちゃんの傍にはいられなくなる。



そんなもの俺がずっと知っているはずなのに、ものすごく胸が痛くて、もっと一緒にいたいとわがままを言ってしまいそうになる。



あなたちゃんを幸せに出来る力があったら、あなたちゃんのそばにいれる覚悟があったのなら、あなたちゃんと一緒に笑える未来があるのなら、



「.......どれだけ俺は幸せだっただろうな。」



ぼそり、と呟いた俺の声は誰にも届かなかった。



俺の右手には、最上さんブラックトリガーを握っていて。



「最上さん。俺、上手くやれてるかな?」



戻るはずのない、ブラックトリガーに声をかける。



少しだけ元気が出た気がする。



やっぱり最上さんは凄いや、こんな俺を励ましてくれるんだもん。



「最上さん、俺あなたちゃんのこと好きでい続けるよ。それでいつかあなたちゃんが結婚して、幸せになったら」



この気持ちを完全にふたしよう。



「あの子の笑顔のためなら、俺は何度でも初恋を、蓋しよう」



















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