『 kuna side 』
_____あなたはね、可愛くて、優しくて。人の痛みがわかる子なのよ。
_____あなたは私たちの大切な娘なの。
_____まったく、無理すんなよー?
_____あなた、お前のやりたいようにやれ。俺と母さんがお前のレールを敷いてやる。
お母さん、お父さん。私一人ぼっちだけどね。
大切な人も、全部失ったけどね。
私、今が楽しいよ。
ボーダーの仲間のみんなが暖かくて、優しくて。
翡翠や深藍はいつも私と一緒にいてくれて。
みんな、みんな。大好きだよ。
でも、やっぱり心残りは、にのみやさん達とまだ仲直りできてないの。
私まだ話し合えてもないの。ずっと逃げっぱなしで。
「向き合わないとってわかってるんだけどね。お母さん、お父さん。」
「.......そろそろ行くね、お母さん、お父さん。また来月来るよ。」
私の声がよく通る。いつもなら私の声なんて小さいのに、ここにきた時だけは本当に欲の通る。
_____逃げてもいいわ。あなたなら大丈夫よ。
_____今は逃げててもいい、お前はいつか絶対そいつらを必要とするのだから。
後ろを向いて、帰ろうとするとお墓の方から声のようなものが聞こえた気がした。
励ましと、未来予知みたいなもの。ほんとに、お母さんとお父さんにはかなわないよ。
「私、絶対匡貴兄さんと仲直りするね!」
満面の笑みで私をそう答えた。
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あなたちゃんの未来が綺麗だ。
あなたちゃんの未来が、笑顔に満ち溢れている。
この先悲しいことも苦しいこともいっぱいあると思う。
それでも、あなたちゃんのもっと先の奥の未来は笑顔で満ち溢れている。
そこには二宮さんも居て。やっぱりあなたちゃんには二宮さんが必要なんじゃないか、と少しだけ笑いそうになった。
それと同時に、心から溢れ出てくる喜びと、後悔。
俺はいつか、あなたちゃんの傍にはいられなくなる。
そんなもの俺がずっと知っているはずなのに、ものすごく胸が痛くて、もっと一緒にいたいとわがままを言ってしまいそうになる。
あなたちゃんを幸せに出来る力があったら、あなたちゃんのそばにいれる覚悟があったのなら、あなたちゃんと一緒に笑える未来があるのなら、
「.......どれだけ俺は幸せだっただろうな。」
ぼそり、と呟いた俺の声は誰にも届かなかった。
俺の右手には、最上さんを握っていて。
「最上さん。俺、上手くやれてるかな?」
戻るはずのない、ブラックトリガーに声をかける。
少しだけ元気が出た気がする。
やっぱり最上さんは凄いや、こんな俺を励ましてくれるんだもん。
「最上さん、俺あなたちゃんのこと好きでい続けるよ。それでいつかあなたちゃんが結婚して、幸せになったら」
この気持ちを完全にふたしよう。
「あの子の笑顔のためなら、俺は何度でも初恋を、蓋しよう」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。