『 kako side 』
誰よりも、大切にしていた自覚があった
誰よりもそばにいた自覚があった
誰よりも、あの子を理解しているつもりだった
私は、ううん。でも、あなたちゃんはそんなことなかったのかしら。
私はあなたちゃんにとってどうでもいい存在だったのかしら。
「酷い人ね、あなたちゃん。」
私がどれだけあなたちゃんを大切にしても、あの子のいちばんにはなれない。
それは多分、私がいちばんよく知っていて、いちばん知りたくない事実なのだから。
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「太刀川くん。いい加減にしてくれない?私も忙しいのだけれど。」
イライラを包み隠さずに、太刀川くんにそういう。
元々今日はここには来ないつもりだったのに太刀川くんが課題を遅れているせいで、私まで呼ばれた。
太刀川くんの頭の悪さはあなたちゃんが頭を抱えるほどの悪さ。
正直に言って、出水くんや米屋くんとは比較にならないほどに頭が悪い。
「全く.......」
「わりぃわりぃ!なんかあったわ!」
にかっ、と笑いながらそういう太刀川くんがにまたイライラする。
この子、反省していないわね、さてどうしようかしら。
少し頭の中で考えていると、後ろから声がかけられる。
「あれ、のぞみ。けい。どうしたの?」
「お、あなたじゃねーの!」
「あら、あなたちゃん」
さっきまでイライラしていた気分が晴れた。
私にとってあなたちゃんは、大切な友達で、守りたい存在。
私を、加古望としてみてくれるあなたちゃんが大好きだから。
「なにこれ、勉強会?のぞみ、かわいそ」
うげぇ、と面倒くさそうな顔をしているあなたちゃんに少しだけ笑いが上がる。
やっぱり、あなたちゃんはこんなにもわかりやすいじゃないか。
二宮くんも、あなたちゃんも不器用すぎるだけなんだわ。
二人の間で見えない壁があるようだけれど、そんなのは隙間ぐらいの大きさよ。
だから、私が何も言わなくなって。私が何も知らせなくなっていいわ。
きっと、大丈夫なんだから。
「あっ、そーやさん!!しろーとりょうもいるじゃん?」
あなたちゃんのもう少し後ろの方から風間隊が来る。
ぺこり、と風間さんにお礼をして、太刀川くんは顔を青ざめている。
風間さんはイライラというより、怒りを纏っている状態で、菊地原くんは面倒くさそうな顔をしつつもあなたちゃんに会えて嬉しいのか少しだけ嬉しそうにしている。
歌川くんはいつも通りの様子。
やっぱり、私。二宮くんとあなたちゃん。そして私、太刀川くんのよにんでまた、話してみたいわ。
だから、あなたちゃん。早く仲直りしてよね。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!