それは進級して小学六年生に上がって、彼女とまた同じクラスになっても変わらなかった。ただ、あーいるなーって感じのまま。小五と変わったのは席が左斜め後ろから3つ前に変わっていたことくらいだった。
ただ、夏あたり。僕のクラスの友達に「交換ノートをやろう!」と半ば無理やり誘われて何人かと交換ノートを始めた。その「何人か」の中に彼女、七瀬がいた。最初はそんな気にならなかったが、彼女がいつもノートに書くかわいい女の子のイラストを見ているうちに興味が湧いてきた。まだ好意には程遠かったが少なくとも僕が女子に興味を持つのは結構珍しいことだったので、彼女と何かしら関わってみたいと感じるようになった。たしかなんでこんな絵が上手なのかな、なんのキャラクターの絵かな、みたいなことを知りたかった。
それから月日が過ぎて、冬。僕は七瀬と七瀬の友達、僕と僕の友達でどこかに行こうと誘われた。断る理由もなかったし行き先が神奈川県の某パラダイスだったのでついて行った。
そこで僕は、縦に何度も揺れる揺れる船やクルクル回るティーカップ、水の上を進む時々水がかかる船みたいなのに乗ったりして、最後はもちろんトイレに行った。 酔った。
言わずもがな絶叫系苦手だ。揺れるの酔うの回るの苦手。
終盤に友達から「最後何乗りたい?」と聞かれて、「帰りの電車」と答えた僕の気持ち、分かるだろうか。
そしてその日の帰りの電車。僕の肩に寄っかかって寝ている七瀬をみてドキドキしながら、疲れ果てて家に帰っ…
ん?ドキドキしながら?なぜ僕はドキドキしているんだ?
と、考えてやっと気づいた。僕はその日彼女のことが好きなのだと。ようやくわかった。
そんな大したきっかけもなく。
それが僕の初恋だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。