第4話

中一の4月の話
65
2018/06/12 10:35
僕達はほぼ全員同じ中学校に入学した。もちろん僕も七瀬も。
入学式、彼女を探したけど見当たらず、新しいクラスに入っても見当たらず。入学早々運悪いなとか考えながら下校中ぼーっとしてたら前から誰かが倒れこんできた。僕の貧弱な体はポキッと倒れた。唯一かっこよかったのはその倒れてきた人を僕を下敷きとして守れたことだけど、まあ倒れるとき「ぐへっ」とか言っちゃったからにはどっちにしろかっこ悪い。
ぶつかってきたうえにまだ僕の上に乗っているその野郎を抱えるようにして立たせてあげて、「大丈夫ですか?」と聞いておいた。一応余裕を見せるために。
そいつは目を丸くしてついでに頬を赤く染めて「ありがと。」といった。なんだ、なぜ頬を赤くした?お前男だろ?悪いな俺には七瀬と言う好きな子が…と思いその野郎を僕の低視力眼で見ると、その野郎、いやその子は。七瀬だった。

何故ぶつかってきたのかとか、どうしてこんな下校時間に前から来たのか、僕のひねった右足首どうしてくれるんだとかいう質問は一気に消え去った。
「怪我してない?大丈夫?」
七瀬は言った。
「ぜ、全然大丈夫!七瀬は?」
「大丈夫だよ。ありがとね。ちょっと急いでるから、じゃあまた」
「お、おお、またな」
なぜだかさっきまで全然大丈夫じゃなかった僕のメンタルと右足首が一気に癒えた。
あれから、某パラダイスに言ってから、僕が彼女を好きだと知ってから、彼女の前で普通に話せなくなった気がする。変なことを言って嫌われたくないという思いから一言一言を無駄に考えて話すようになった。
そして、この時やっと小学五年生の中途半端だった僕から変わることが出来たと感じた。わかりやすい変化ではなかったが僕の心のどこかが変わった気がした。

ただ、それが良い変化か、悪い変化なのか、その頃の僕には分からなかった。

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