そう。私の親はとても厳しい人だった。
"夏場は17:30 冬場は16:00"という門限があったり、
友達とLINE等で連絡先を交換する時は、親の許可を貰ったり、
我が家には色々な決まりがある。
もし、門限を破ったり、成績が下がったりすると何をされるかわからない。
木村くんはボソッと呟いた。
(やっぱり、迷惑だったよね…。)
小学校の頃から周りが羨ましかった。
「この間、友達とデパートで買い物したんだぁ〜!可愛いでしょ!」
「前に撮ったプリクラやばかったよね!」
周りはそんなことをいつも話してた。
(いいなぁ〜。私も明香里と行きたい。)
ある日、私は親に相談した。
「ねぇねぇ。今度友達とデパートに遊びに行ってもいい?」
「ダメだ。」
親はすぐに答えた。
「なんで??他の人は友達とデパートに行ってるんだよ!」
「デパートなんて親と行かないとダメだろ。もし悪い人がいたらどうするんだ!」
「っ...ごめんなさい。」
私はなんとも言えなくなった。
確かに友達と2人だけで遊びに行くことは少し怖い。
それに親に迷惑かけたくない。
その日から私は友達の家でしか遊ぶことはなかった。
確かにふたりの言う通りかもしれない。
私はずっと親の指示に従ってきた。でも、この機会を通して色んなことを学べるかもしれない。
私はスマホを取り出して親に連絡した。
"今度、友達と図書館で勉強会をするんですが、行ってもいいですか?"
(送信)
LINE♪
携帯が鳴った。親からだ。
心の奥底から何かが込み上げると同時に涙があふれてきた。
(なんだろう…嬉しいはずなのに、涙が止まらない。)
私は泣きながら言った途端、木村くんが私を包み込むように抱きついた。
木村くんは必死に私のことを抱きしめた。
明香里と信彦くんは呆然としていた。
(こんなの…恥ずかしすぎる。)
そう言って教室を後にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。