玄関でそんな話してると颯人が
手を引いてリビングまで連れて行ってくる
その笑顔もその手もその声も好き。
ほんとあったかいね、颯人
でも言わなきゃ。
リビングに行き、2人でソファに座る
わたしは大きく深呼吸をしてから話し始めた。
この前、見学じゃなくて廉くんと雑誌の
撮影してもらってその雑誌がいま発売してること
反響が良くてSNSで話題になってること
キラキラしてる自分をみて
この仕事をしたいと思ったこと
今日社長に会ったこと
そして、、、
頑張ってみると決めたこと
東京に行かなければならないこと
ゆっくり
ゆっくり
自分の気持ちを全て話した。
颯人は何も言わず静かに私の話を聞いてくれた。
話し終えても何も言わない颯人。
静かな沈黙が流れ続ける…
颯人がゆっくりと口を開く。
ほら、やっぱり優しい。
優しすぎるよ…
でも、ありがとう…ほんとに大好き。
涙が止まらない…
泣くつもりなんてなかったのに
まばたきするたびにこぼれ落ちる涙。
颯人は私の頬につたう涙を拭いながら
落ち着いた声で話を続ける
颯人が真剣な目でわたしを見つめる。
そして
わたしの左の薬指にある婚約指輪を
そっと外す。
なんで…
えっ…
どうゆうこと。
なんで笑ってるの…
泣き叫ぶかのようにわたしは話す…
大好き。
本当に大好き。
颯人はそっとわたしを抱きしめて
背中をさすってくれる。
鼻をすする音が聞こえた…
颯人も泣いてるのかな。
ごめんなさい。
普通の幸せを捨てたのは、、、
わたしです。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。