撮影が始まろうとしたとき
あなたちゃんが倒れた…
鈍い音がして地面に横たわるあなたちゃん…
すぐに駆け寄り抱きかかえてゆすってみるけど返事はない
目を閉じて眠るようにぐったりしている
救急車が来て付き添うことにした俺は
車内で彼女の手を握りながらただ祈ることしか出来ない
病院に着き処置室へと運ばれる
落ち着けるはずもなく俺は廊下を
ソワソワと行ったり来たりする
数十分後、処置室からベットに眠るあなたちゃんが出てきた
医者
「大丈夫ですよ…ニコッ
もうすぐ目を覚ましますので。」
看護師
「病室へどうぞ。」
病室に着くと看護師さんたちは出て行き
先生と俺、そして眠ったままのあなたちゃんだけになる
医者
「ご家族の方で…は…ないですよね…」
医者
「とりあえず…ご説明しますね。
また後でご家族や関係者の方には
わたしから説明いたします。
一ノ瀬さんは…過労ですね…
点滴しておりますのでこのまま続けて頂いて
2.3日様子を見て一応検査もしておきまょう。
何もなければ遅くても1週間後には
退院出来ると思いますので。
ひとまず、安静にお願いします。」
医者
「くれぐれも安静にお願いします。
それでは私はこれで。」
ガラッ
先生が出ていき病室には2人きりになる
ベットの横の椅子に座り静かに眠る彼女を見つめる
こんな時も綺麗なんだ…
そう思いながら彼女の手を握る
頭をそっと撫で頬に触れる…
ピクッ
あなたさんの瞼が少し動いた…
俺は立ち上がり呼びかける
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!