前の話
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君の卒業、それは僕にはどうすることも出来なくて、どうしようもなく辛いことだった。
テレビのなかの彼女はどこか大人しくて、
緊張してるけどにこにこしてて、とにかくかわいくて、見てるだけで幸せだった。
そんなきみの、卒業。
耐えられそうになくて、吐きそうになる。
涙なんて昨日枯れたほど流したはずなのに
まだ残っていたんだな。
目頭が熱くなってまた首を振る
音楽をかけて、
でもきみは今の仕事をやめるわけじゃない
と思い直す。
テレビで全く見れなくなるわけじゃない。
じゃあ僕たちはきみの新しいスタートを、
応援するべきじゃないか?
そう考えているうちにお湯が沸いた。
コーヒを入れて、飲んでいると
吹き出しそうになった。
流れる音楽は僕をまた泣かせにかかる。
やっぱりつよくなれないな、と思いながら音量を上げた。
サヨナラの意味をいつかわかるようになるために。
西野七瀬、ありがとう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。