第56話

私に余裕な心
2,966
2019/09/03 14:43
佐野玲於
あ、ちょっとごめん。
そう言って、私から離れていく玲於さん。


行かないで、


そう心で叫んだ。


ユキ…って彼女さん?


それとも、亜嵐くんが言っていた玲於さんは


恋ができないっていう理由なの?
ぎゅっと握りしめた手のひら。


爪で手のひらが痛い。


玲於さん、誰と話してる?
暗くてよく見えない。
あなた

玲於さん…

走って戻ってきた玲於さん。


私の前で
佐野玲於
ごめん、、先帰ってて…
俺、寄るところ出来た…
あなた

わかりました!
今日はありがとうございました。

佐野玲於
うん、、ごめん。また行こう。
あなた

ぜひ!!

玲於さんの横を素早く通り過ぎる。


だって、私、大人じゃないからさ。


高三でもう大人の仲間入りする手前。


けど、私には


そんな…余裕な心持てない。


いつまでも平常心保てる自信ない。
玲於さんから香る香り。


いつまでも鼻は覚えたまま。
…また、目から涙。


玲於さんは違う人のために走る。


どんな用事があっても。


その人のためなら…って
あなた

辛いっ…玲於さんっ…

こんなに人を好きになったのは初めて。


余計に整理がつかなくて


気持ちも抑えることが出来ない。
経験浅いから…


わかんないの。


こういう時、どう対応するか。


ああなった時、引き止めるのが普通なのか。


わかんない。


何も。
考えれば考えるほど涙は止まらず溢れる。


玲於さんの為に可愛くした化粧も涙で流れていく。
歩くスピードもだんだんゆっくりになって


気づけば大通りに出ていた。


東京はずっと賑やかだ。


人いるもん…
サラリーマンとかOLさんとか。


仕事帰り、飲みに行く人だらけ。
そんな人たちを避けながら歩いていたら
おじさん
ちょっと?
あなた

え?はい?

おじさん
君高校生?
スーツを着たおじさん。


ちょっと酒臭くて、酔ってるのか。
あなた

…なんですか。

おじさん
1人で何してるの?
あなた

帰りで…

おじさん
危ないなぁ、こんな夜中に一人で。
そういったおじさんの顔つきが


急変してとてつもなく気持ち悪い。


仕舞いには、私の手を掴んで離さない。


やめてっ、


そう思うのにいざとなれば声なんか出ない。
おじさん
いいとこ行こうよ ~ 。
あなた

行きません!

おじさん
してこい女だな ~ 。
必死に抵抗し、やっと振り解けたけど


まだまだ追いかけてくるおじさん。


私は必死になって電話帳を開いた。


上から順に


玲於さん





北人


玲於さんはダメだし…



…北人!!


prrrrrrrrrr
こんな夜中だとかそんなこと考えれなくて


申し訳なかったけど


怖くて…怖くて…
吉野北人
…はい
明らかに眠そうな北人の声。
あなた

北人っ、お願い、助けてっ…

吉野北人
は!?何してんの!
あなた

ちょっと追われてる…私!

吉野北人
ちょっとどこ?
あなた

わかんない。
あ!!

目の前に現れる私達のバイト先。
あなた

バイト先の前今走ってる…!
お願いっ、北人…
私、、怖い…

止まらない涙は地面に落ちていくだけ。


後ろから声がして怖くてたまらない。
吉野北人
今から行くから近くのどこかに隠れて。
あなた

どこっ…

吉野北人
電話切らないから落ち着け。
おじさんをまいてちょっとした路地裏。


怖いけど、仕方ない。
青色のゴミ箱の後ろに隠れた。


大きなゴミ箱。
あなた

…隠れたっ

吉野北人
よし、なら、場所教えて。
あなた

位置情報…送る!

吉野北人
おう。
電話が中断されてすごい不安になった。


手の震えも止まらないし


吐きそうなぐらい気持ち悪くなる。
北人に位置情報を送信しすぐ既読になる。
…北人っ

プリ小説オーディオドラマ