玲於side
絶対、あなただ。
あれ、
バイト始めたとか知らない間によ。
あん時は、俺もちょっとびっくりした。
当たり前のように亜嵐くんから
すぐに指摘される。
よく見てんのよ、このリーダー。
お互い顔を合わせてだよなって分かち合う。
やっぱ、、あいつら
二人一緒にバイトしてんだ。
…めちゃくちゃ嫌だ。
吉野とか最悪。
これ割りと本気で思った。
…って、めちゃくちゃ嫉妬してるし、俺。
しかし、あいつのことが好きだと気づけば
止まらなくなる嫉妬というもの。
俺ってこんなに嫉妬深いんだ
改めて感じた。
そして、また、余裕をなくす。
俺だけに見せてくれてたあの笑顔は
吉野にも見せてんだって考えたら冷静なんかで居られない。
個室の壁にもたれて亜嵐くんに励ましてもらう。
頼んでいた注文はなかなか来ない。
その時にやってきたのは愛さん。
前、飲みに行っていた居酒屋で知り合った人。
俺らの姉さんみたいな。
いい感じに入ってきたお酒。
メンバーもだんだん乗ってきて盛り上がってきたところ。
携帯にLINEが入っていたことに今気づいた。
相手は
「 玲於さんの居る居酒屋私バイトしてますよ 」
3分前。
遅くない?
そんなの、言われなくたってあんなの見たらわかるし。
「 知ってるけど 」
そう返したらすぐ既読がついて
「 ごゆっくりしてくださいね 」
はいはい、
と、携帯を閉まって、何分かしたとき。
また、トイレ行きたくなった。
めちゃくちゃ亜嵐くんに飲まされんだよ ~ 。
もう、辛い。
吐く。
限界が来たみたいで結構早めにトイレに駆け込もうと走る。
すると、
出入口をあなたと吉野で帰ろうとしているところを見かけた。
気持ち悪いなんかいつの間にかなくなってて
気づいたら…
あなたの手を掴んでいて
驚きを隠せないように目を見開くあなた。
最近ちゃんと話せてなかった。
俺が当たっちゃったり、あなたを泣かせてばかりだから。
笑い合いたい。
そう出来るのは今だと思ったから。
んだよ、ごめんねって。
俺が悪い事したみたい…だけど。
実際は、多分そう。
じんわりと伝わるあなたの腕からの熱。
俺は慌てて離した。
俺の精一杯の言葉だった。
笑ってくれたあなた。
その笑顔を見たら俺、溶けちゃいそうで
…俺、すごいっ。
言えたぞ。
やっば、嬉しい。
一緒に帰れる。
メンバーの、いるところに戻ると
相変わらず騒がしいメンバー。
が、1名爆睡。
金髪豚野郎。
5000円おいてすぐさま、あなたの元へ戻った。
はやく、どこか行ってしまわないうちにっ。
向かった先にはちゃんとあなたがいて
確かに、俺の好きになった人。
こんな恋。
初めて。
目が合うだけでめちゃくちゃ嬉しいし、
笑われると尚更、やばい。
外に出た時。
今年、初雪がチラチラと降っていた。
それを見るあなたの横顔。
っ…そんな、可愛い顔すんなよ。
マスクをつけてあげたくなるような可愛い顔で焦った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。