北人side
あれだけ人には言わないようにしてたのに。
失態。
右手で頭をかく。
この金髪…いつ辞めよう。
でも、、あなたは俺らしくいればいいって
言ってくれたこと。
すっげぇ、嬉しかった。
言われたことないし
俺のやってることいつも否定され続けてきたから。
その瞬間、俺、今までにないぐらい
気持ち高ぶってまじ壊れるかと思った。
家に帰れば俺の事を冷たい目で見る親父。
この頭について凄く馬鹿にして
俺の人生をまた勝手に決め出す。
俺の親。
有名な企業の社長。
跡を継いで欲しい親の願望。
無理だし、なるつもりもない。
あなたのアパートの階段を降りていたら
入口にシルバーのボックスカーが止まった。
中からは…
あなたの好きな奴。
玲於さん。
中に居るらしきメンバーの方達。
その人たちに向かって手を振る玲於さん。
車が坂を降りていくと
玲於さんは携帯だけを見つめて歩いてくる。
俺の方向に。
あ、そうか、あなたの横か。
フードとマスクの完全防備で芸能人だと言うことが分かる。
しかし、ずっと携帯一途でなかなか前を向かない玲於さん。
目の前にある大きな電気にぶつかりそうになって
よろけた玲於さん。
その時、俺にやっと気づいた玲於さんは
前に会った時と同じ顔をする。
携帯をポケットに閉まって俺にペコッと頭を下げた。
俺も下げる。
玲於さんの横を通り抜けようとした時。
目の前にいるのが本物の佐野玲於。
それに若干戸惑う。
玲於さんは冷たいとネットでも有名。
まじだ…
こんな態度の人がいいのか。あなたは。
もっと優しい人…だと思ってたけど…
俺への質問が止まらない。
俺の気持ちを探るように聞いてくるその目は
嘘をつかせてくれない。
慌てて顔を隠す。
そんな顔に出る人じゃないんだけど…な。
ニヤッと口角を上げて
ポンと俺の肩を叩いて上がっていく玲於さん。
…頑張れよって
玲於さんはあなたのこと好きじゃない…?
あなたの片思いなのか…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!