第48話

本物の佐野玲於
3,006
2019/09/01 07:04
北人side
吉野北人
変な事言っちゃった…
あれだけ人には言わないようにしてたのに。
失態。


右手で頭をかく。


この金髪…いつ辞めよう。


でも、、あなたは俺らしくいればいいって


言ってくれたこと。


すっげぇ、嬉しかった。


言われたことないし


俺のやってることいつも否定され続けてきたから。


その瞬間、俺、今までにないぐらい


気持ち高ぶってまじ壊れるかと思った。
家に帰れば俺の事を冷たい目で見る親父。
この頭について凄く馬鹿にして


俺の人生をまた勝手に決め出す。
俺の親。


有名な企業の社長。


跡を継いで欲しい親の願望。


無理だし、なるつもりもない。
吉野北人
はぁ…
あなたのアパートの階段を降りていたら


入口にシルバーのボックスカーが止まった。
中からは…
吉野北人
えっ…嘘だろ…
あなたの好きな奴。
玲於さん。
中に居るらしきメンバーの方達。


その人たちに向かって手を振る玲於さん。
車が坂を降りていくと
玲於さんは携帯だけを見つめて歩いてくる。


俺の方向に。


あ、そうか、あなたの横か。
フードとマスクの完全防備で芸能人だと言うことが分かる。
しかし、ずっと携帯一途でなかなか前を向かない玲於さん。
目の前にある大きな電気にぶつかりそうになって


よろけた玲於さん。
その時、俺にやっと気づいた玲於さんは
佐野玲於
あ、
前に会った時と同じ顔をする。
吉野北人
こんにちは…
佐野玲於
ども…
携帯をポケットに閉まって俺にペコッと頭を下げた。
俺も下げる。
玲於さんの横を通り抜けようとした時。
佐野玲於
あなたの部屋にいたの?
吉野北人
あっ、はい。
目の前にいるのが本物の佐野玲於。


それに若干戸惑う。
佐野玲於
何しに来てたの。
吉野北人
…紅茶頂きました。
佐野玲於
紅茶?
吉野北人
お礼だって…
佐野玲於
…あっそ。
玲於さんは冷たいとネットでも有名。


まじだ…
こんな態度の人がいいのか。あなたは。
もっと優しい人…だと思ってたけど…
佐野玲於
あなたの何?
俺への質問が止まらない。
吉野北人
友達…です。
佐野玲於
本当?
俺の気持ちを探るように聞いてくるその目は


嘘をつかせてくれない。
吉野北人
…あなたは俺の事友達だと思ってます。
佐野玲於
だろうな。
吉野北人
…なんでわかったんですか。
佐野玲於
顔に出てるから。前見た時も。
吉野北人
顔…?
佐野玲於
明らかにニヤついてる。
吉野北人
ま、まじっすか!?
慌てて顔を隠す。


そんな顔に出る人じゃないんだけど…な。
佐野玲於
ま、頑張れよ。
ニヤッと口角を上げて


ポンと俺の肩を叩いて上がっていく玲於さん。
…頑張れよって


玲於さんはあなたのこと好きじゃない…?
あなたの片思いなのか…?

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