第5話

得意分野
3,831
2019/08/24 14:00
食べ終えた食器達をシンクに運ぶ。
佐野玲於
置いておいて ~ 。
テレビを見ながら私に伝える。
あなた

洗います!!

佐野玲於
置いておいてくれればいいのに?
あなた

洗わせてください!

佐野玲於
お、う…、なら、よろしく…?
あなた

はい!

洗い物は得意だ。


実家でよくお母さんの手伝いをしてたから。


小さい頃から教えこまれてきた


皿洗いは得意分野。
佐野さんの食べた食器…


そう考えたらぼーっとしちゃって
佐野玲於
澤島さん?
あなた

あ、はい!

佐野玲於
ボケっとしてどした?
あなた

いやいや!なんでもないです!

佐野玲於
変な人 ~ 。
立ち上がった佐野さんはキッチンのカウンター前に


肘ついて動かなくなる。
佐野さんを瞬間的に見ると


目が合ってびっくりした。
佐野玲於
ふはっ、照れてんの。
あなた

て、れるって、どこがですか!

佐野玲於
その話し方完璧照れて動揺してるわ。
あなた

してません!

佐野玲於
おもしろ ~ 。
あなた

なんも、面白くないですよ。

佐野玲於
ううん、澤島さんは俺のツボかもな。
そう上目遣いで言われるからさ…


ドキドキしない人、いないでしょ…


こんな顔面偏差値高すぎな人に。
あなた

つ、ツボって…やっぱ、馬鹿にしてますね。

佐野玲於
だから、否定はしない。
あなた

も ~ !

佐野玲於
ふはっ!
そう言ってソファに戻っていってしまった。


そうだ、転校先の高校になるんだよなぁ、私。


友達できるかな。


心配が募るばかり。
皿洗いを終えて、佐野さんの隣に座る。
佐野さんの見るテレビ。


見たことの無いテレビ。


7人がキラキラと汗を流して踊ってるテレビ。
私も見ようと前のめりになった時。


プチッと切られて
佐野玲於
さっ、帰りな?
あなた

…わ、11時!

佐野玲於
うん
あなた

初めて…

佐野玲於
は!?
あなた

11時に寝るとか初めてです!

田舎だからテレビも何もやってないし


その時は携帯も必要なかった。


特に趣味はなかったし


田舎娘ってこんなもんでしょ。
地元の子とお喋りしてるのか一番楽しかったし


来る前も長々と家の電話を使ってコソコソ電話してたもんね。
佐野玲於
…どこから来たの。
あなた

田舎です!

佐野玲於
へぇ、
あなた

田舎はいいですよ?
都会とは違う良さがあって!

佐野玲於
それは、知ってるよ。
靴を履いてドアノブに手をかける。
あなた

ぜひ、行ってみてくださいね!

佐野玲於
…おう。
あなた

ありがとうございました!
おやすみなさい。

佐野玲於
おやすみ
頭を下げて外に出る。


寒いっ、


直ぐに家に入ると


何にもない部屋が玄関から見えるだけ。


佐野さんの部屋‪が贅沢すぎるんだ。
悲しく見えてくる。
一応ベッドは引越センターの方が運んでくれたから問題は無い。


暖房持ってこればよかった。


ミスった…
ちょっとの、期間だし、いいかなって。


甘い考えだったな。
お風呂に入って何もかも済ませ、


布団にダイブ。
あなた

ふぁ、幸せ…

布団の温もりが地元の温もりのようで
あなた

お母さん…

お母さんに会いたくなってしまう。

プリ小説オーディオドラマ