気づけば日付をまたいでた。
既読はついてる…のに
返事が来ない。
玲於さんってそういう感じなのかな、
…きっとそうだ。
玲於さんに組み立ててもらった家具達。
玲於さんに綺麗に並べてもらってさ、
私、玲於さんにお世話になりっぱなしじゃん。
初めの頃から。
携帯はなかなか通知をお知らせしてくれない。
玲於さん、寝たかな。
そうだよね、
…仕方ない。
明日もう一度謝ろう。
ちゃんとお話して仲直り…っていうか
玲於さんと前みたいに。
.
目を瞑ってベッドに入るもなかなか寝れない。
寝れない理由は玲於さん。
ため息をついて、上に羽織ってベッドに腰かける。
カーテンの隙間から見えるのは綺麗な月。
都会でも…見えるんだ。
カーテンを開けてベランダのドアを開けた。
寒いのに…
ずっと見てたくなる。
寝たくない。
ベランダの柵に手を置いた。
冷たいなぁ…
玲於さん、みたい…
こんなに玲於さんが私の中で大きくなってる。
どうしよう。
寝れなくなるぐらい気になる。
玲於さん、
月がだんだんボケる。
…もう、泣きたくないのに。
明日目腫れたくない。
思わず、
玲於さんの名前が零れそうになった時。
隣から聞こえた声。
それは、玲於さんの声。
さっきとはちょっと変わった柔らかい声。
…私、ちゃんと話せてるかな。
謝んなきゃ…
謝る理由はわからない。
けど、玲於さんには嫌われたくないから。
嫌な奴って思われたくないから。
だんだん、涙が目からこぼれ落ちそうになる。
まだ、耐えて…
" 大事な "
それを聞いた瞬間、堪えていた涙が一気に流れ出した。
隣の仕切りの横から伸びてきた玲於さんの手。
トントン、と私の頭に触れる。
…もう、どんなけ好きにさせるんだ。
この人は。
好きだから許しちゃう。
こんな甘くて苦い恋は初めてだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。