第81話

夏祭り
8,722
2020/12/10 13:54



8月半ば。天気は最高の夏祭り日和です



そして明日東京へ帰る。



北さんに会えるのは今日で最後なのかもしれない
雪薗愛佳
雪薗愛佳
✉北さんと夏祭り楽しむんやで!


愛佳からのline。


愛佳には全て話したし、凄く泣いてた。





愛佳に、楽しんでくる!っていつもの様に返す





北信介
北信介
あなた


後ろから大好きな、北さんの声
わたし
わたし
北さん!


えっ……浴衣似合い過ぎて辛い。


北信介
北信介
見せもんちゃうよ。
わたし
わたし
見てくれと言わんばかりの格好ですなぁ!


もちろん北さんへの対応もいつも通り。

北信介
北信介
ほな、行こか



神社のお祭りなだけあって、凄い新鮮。

妖怪とか人間に紛れて居るんじゃないかってぐらい
雰囲気ある
北信介
北信介
ほんま変わらんなぁ
わたし
わたし
ここの夏祭り毎年来てる感じ?
北信介
北信介
バレー部員と毎年来てんねん


彼女と来た事あるとか言われたらどうしようかと
思った



色々見て回りながらある物を見つける
わたし
わたし
お面っ!可愛いッ!


走って駆け寄ると
わたし
わたし
わっっ…とっとぉ〜……セーフ……



躓いて転びそうになった
北信介
北信介
セーフやあらへん。危ないやろ

うん、その通りです…
わたし
わたし
気を付けます!


なんて笑ってると、スっと手を差し伸べる
わたし
わたし
え?
北信介
北信介
手繋いだ方が安全や。
わたし
わたし
え、あ、じゃぁ、お言葉に甘えて…


北さんの手はやんわりとしてて、安心感がある



北さんの方を見てみると何かを見てる
わたし
わたし
北さん?
北信介
北信介
あのお面あなたに似合いそうやなぁ
わたし
わたし
え?


そこには黒の赤い斑点が付いた狐のお面だった
わたし
わたし
ふふっ、買っちゃおっ!
おじさん、このお面下さい!


『えらいべっぴんさんやなぁ!』
わたし
わたし
え?ありがとう!


『この黒い狐面は白の狐面とセットやねん!お嬢ちゃん可愛ええからおまけしたるわぁ!』



わたし
わたし
やったぁ!おじさんありがとお!


お金を払い、黒と白の狐面を受け取った



北信介
北信介
2つお面つけるん?
わたし
わたし
いや、付けないから!


そう言って、北さんの頭に白の狐面を付ける
わたし
わたし
え!北さん似合う…
北信介
北信介
え、そぉか?


少し照れくさそうにしてる顔がまた一段と可愛い
わたし
わたし
私は黒!


狐面をつける
北信介
北信介
黒の浴衣姿にぴったしでええよ。似合っとる


そんな一言で私の顔は熱くなる



わたし
わたし
あっ!たこ焼き食べたいっ!

必死に顔を隠すように、繋いだ手を解かぬまま
屋台へ向かう







たこ焼きは北さんが買ってくれた
わたし
わたし
買わせちゃってごめんね?
北信介
北信介
ええよ。狐面貰ったしお返しぐらいされてもバチあたらん



たこ焼きを2人で食べて
北さんは何やら思い出した様に神社の奥へ進む
わたし
わたし
北さん、こっち何があるの?
北信介
北信介
そろそろやと思うねん。




??

なにが?
北信介
北信介
去年みんなとはぐれた時に見つけたんやけどな



いや、何の話?!




奥へ奥へ進んでいくと
北信介
北信介
ここや

目の前には休憩所?なのかな。


小さい祠もあるけど……


それにしても薄暗い。
北信介
北信介
祭り行くんやったら絶対ここがええなって。



北さんはスマホを取り時間を確認してる
北信介
北信介
あと少しや。あなたここ座り


北さんは休憩所に座って隣をポンポンと叩く。


隣に座ったは言いものの、北さんはずっと空見てる
わたし
わたし
北さん、空見てどうしッ……



ドンッ


と大きい音が聞こえた
わたし
わたし
えっ?!



ヒュ〜〜〜〜〜〜〜







バンッ
わたし
わたし
は、花火?
北信介
北信介
なに、驚いてん
わたし
わたし
花火大会じゃんっ!
北信介
北信介
??なにゆーてん。夏祭りと花火大会一緒やろ




うんッ……私も違い分からないからいいや。



花火なんていつ振りだろう。

北さんと花火。なんか絵になる。




触れたい。なんて欲が出てくる


花火を眺めていると


ピタッ
北信介
北信介
あっ、すまんっ


触れた手を北さんが離そう
わたし
わたし
このままでいて。


ギュッと手を握る
北信介
北信介
分かった



お互い花火をただただ眺めて時間が過ぎていく。



わたし
わたし
今日でこの日常を終わるんだな…



心の声が漏れた
わたし
わたし
あっ、ごめん!口に出したつもりじゃっ…



目の前に北さんの顔。



触れた唇が熱くて、でも何処か切なくて。

北信介
北信介
大丈夫やで。俺はちゃんとあなたを見とる。きっと神さんだって見とるよ。


その大丈夫って言葉と神様が見てるってゆー言葉は

あまりにも私には重くて、息が苦しかった
わたし
わたし
北さん……私と1つになってくれませんか。



私は何言ってんだろ


北さんは考えて、考えて出した結果が



















北信介
北信介
俺まだ立派な大人やないからそれは今出来ん…なぁ……



最後の最後まで、正論パンチかあぁ。

わたし
わたし
うん!知ってる!



いつの間にか終わっていた花火
わたし
わたし
花火終わったし、帰ろっか!
北信介
北信介
せやな








北さんとの分かれ道が近付いてきた



うん、大丈夫。未練は無い


わたし
わたし
北さん、私の事忘れて。
私も北さんの事忘れる事にします
北信介
北信介
……。俺は多分。いや、絶対忘れる気ぃせんけど、お互い幸せなろな。



お互い一緒に幸せになれる選択肢は無い。


グサグサと刺さる北さんの言葉。
わたし
わたし
はい。幸せになるので見ててね
北さん、さようなら。


北さんの言葉は聞かず、振り向かず

私はただひたすら歩いた。




ホロホロと涙を流しながら、明日からまたちゃんと
笑えるように


今はただ素直に泣いた。









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