今、ジンが話したことは、
あの時玄樹が言っていたこととは、
ほぼ真逆に近い。
でも、それがあの話の続きなのだとすれば、
納得出来る。
それに、きっとジンは、
私を慰める為に、
言ってくれたんだと思う。
やっぱり今、私がジンに言える言葉は、
“ありがとう”
しかない。
事がまた動いたのは、
それから3時間後……
キィーー
また、ドアが軋む音と共に、
海人が帰ってきたのだ。
何となく、この後のことは分かっていた。
捕まった時点で、
あの人が、私達のことを解放する訳がない。
だから、きっとこのまま、
私達3人は、
捕まったままだろう。
でも、少し変なことがあった。
海人を連れて来た、
あの人の手下(?)が、
海人をイスに縛り付ける訳でもなく、
そのまま小屋から出ていったのだ。
パチッ
そして私達2人は、海人に紐を解いてもらった。
あなたは、真っ直ぐ前を見ていた。
その目に迷いは…………
まだ、少しだけ残っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!